忠臣蔵で人気の「赤穂浪士」を福沢諭吉が非難の訳 一方で福沢の「赤穂不義士論」には中傷の声も

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赤穂大石神社、 赤穂四十七士の石像(写真:taka /PIXTA)

明治のベストセラー福沢諭吉の『学問のすすめ』(1872年)と聞けば、教育論を延々と書いているかのような印象があるかもしれませんが、決してそうではありません。

もちろん、同書には、実学を学ぶことの重要性や、多くの人が学ぶことにより、それぞれ(一身)が独立し、家が独立し、そして最後には国が独立し、確固として立つことができるという、福沢の理想が述べられています。

しかし、それだけではなく、同書には「封建道徳」「儒教思想」から人々を解放して、主体的な「市民」を養成せんとする福沢の熱意もまた感じることができるのです。そのことを感じることができるのが同書の「六編」ー「国法の貴きを論ず」。

福沢諭吉「敵討ちなどはよくない」

この中で福沢は「敵討ちなどはよくない」と表明しています。自分の親を殺した者は、日本国にて1人の人間を殺した「公の罪人」である。この罪人を捕えて、何らかの刑に処するのは「政府に限りたる職分」なんだと福沢は主張するのです。

よって、一般人はこれにかかわってはいけないと言うのです。たとえ、それが自分の親を殺された子であっても、政府に代わって「公の罪人」を殺す理由などないとしています。

「差し出がましき挙動」「政府の約束に背くもの」とまで福沢は非難しているのです。では、どうすればよいのか?福沢は「その不筋なる次第を政府に訴うべきのみ」とします。そうした福沢の観点からすると、『忠臣蔵』で有名な赤穂浪士の討ち入りなどは非難の対象となってしまうのです。

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