藤ヶ谷太輔"焦りの20代"を抜けた今、思うこと 予想外の仕事が新しい自分の扉を開いてくれた
会社員として勤めていても、思い通りのキャリアを築けるとは限らない。希望とは異なる部署に配属されることもあれば、予想外のプロジェクトにアサインされて戸惑うこともある。
「僕も『なんで自分なんだろう?』と思う仕事のオファーを受けたことは何度もありましたよ」
そううなずいて、藤ヶ谷さんはこんなエピソードを明かしてくれた。
「例えば、30歳を過ぎてからミュージカルのオファーがあって。それまでミュージカルをやったことがなかったし、自分にはできないと思ったんですよね。
でも、やったこともないのにできないというのも失礼な話なので、お返事をする前に映像を観たんです。
『ドン・ジュアン』という作品なんですけど。以前、宝塚(歌劇団)で望海風斗さんが演じているのを拝見して、それがあまりに素晴らしくて、『自分にはここまでのことはできない』と思ってしまいました。
それで、オファーをお断りする前提で演出家の生田大和さんとお会いしたんです」
しかし、生田さんから出てきた一言をきっかけに、心境は一転する。
僕と一緒に冒険に出ませんか?――その言葉に背中を押され、「自分にはできないだろう」と思っていた初ミュージカルに挑むことになった。
「ただの食わず嫌いで『ミュージカルはやりません』だと筋が通らない。でも、この機会に一度やらせていただいて、自分にできるかどうか確かめてみたくなったんですよね。
それで思い切って冒険してみたら、ありがたいことに好評をいただいて。2年後に再演までやらせていただけたんですよ。
もちろん、やらせていただくからには一生懸命やりましたけど、最初は『自分には無理だ』って思っていたことですから、結果がどうなるかなんて本当に分からないものですね」
なんで自分に?と思う仕事が、新しい自分を引き出した
しかも、ミュージカルの仕事にチャレンジしたことが、新たなキャリアを開くきっかけになった。
「今、やらせていただいている『A-Studio+』のMCも、『ドン・ジュアン』のPRのために出させていただいて、その時の(笑福亭)鶴瓶さんとの掛け合いを見たスタッフさんがオファーをくださったみたいなんですよ。
MCの仕事もこれまでやったことがなかったので、最初は『なんで自分なんだろう?』ってびっくりしましたね」
しかし、今や『A-Studio+』は藤ヶ谷太輔を語る上で欠かせない、代名詞のような仕事になった。
「なんで自分に?」と思うようなチャレンジこそ、新しい自分を引き出すチャンスなのかもしれない。