「下半身のストレッチ」で高血圧や冷え性を予防 「体が硬い人」は血管が詰まりやすいという真実

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そして、血液が届かなくなった箇所の毛細血管というのは「不要」と判断され、消失してしまうのです。この毛細血管を再生させるためには血液を送り込むことが必要です。

ストレッチが血管をやわらかくする

では、すでに「硬くなってしまった血管」はもう、諦めるしかないのでしょうか。

元に戻すことはできないのでしょうか。

『体がやわらかくなると血管が強くなる』(アスコム)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします 

いえ、そんなことはありません。

実は、硬くなった血管は、若返らせることができます。

そのために効果的なのが、意外なことに「ストレッチ」です。

世間一般的に、ストレッチといえば、「筋肉の柔軟性を高めること」が効果や目的のひとつです。実際、ストレッチを何度も何度も繰り返し行っていくと、筋肉が伸びやすくなって、前屈したときに床につかなかった手が、つくようにもなっていきます。

「体をやわらかくする手段」としては、とても効果的です。

私たちの研究では、「体の硬い人は、血管も硬い」という事実がわかっています。それであれば、その逆の見方もできるのでは? つまり、「ストレッチで体をやわらかくしていけば、血管もやわらかくなる」。そう考えて実験を行ったところ、その仮説は的中したのです。

まさか、と思いました。いくら逆転の発想とはいえ、体がやわらかくなれば動脈硬化が改善するなんて今まで考えた人はいないと思います。しかし、これは、れっきとしたエビデンスのある事実なのです。

そして、私は、全身に血流が行き渡り、血管がやわらかくなるよう計算されたストレッチを開発しました。

「全身の7割の筋肉が集まる下半身に働きかける」

「大きい筋肉と太い血管を同時に伸ばす」

こうしたポイントを押さえたストレッチです。1日1分から始められます。

動脈硬化の改善といえば、塩分を減らし野菜が多い食事を摂る、日々の生活に運動を取り入れる、なるべくストレスを減らす、酒やたばこを控えるといったことが知られています。

もちろん、そうした心がけは依然として大事なのですが、ハードルが高く、続かない人が多いのも事実です。特に、一定以上の年齢の方にとって、強度のある運動は心身ともに負担が大きいものです。

それに比べると、短時間のストレッチをコツコツ続けるだけで、動脈硬化の改善につながるという事実は、多くの人を日本人の死因上位にくる心疾患や脳血管疾患から救う手助けになる画期的な方法であると、確信しています。

家光 素行 立命館大学教授

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いえみつ もとゆき / Motoyuki Iemitsu

立命館大学スポーツ健康科学部教授。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所客員研究員。1996年、川崎医療福祉大学健康体育学科卒業。2003年、筑波大学大学院医学研究科博士課程修了。筑波大学大学院医学研究科(体育科学系)助手などを経て、14年より現職。人生100年時代において、健康寿命をいかに伸ばすか研究を重ねた結果、「血管」の重要性に着目。独自に開発した「血管ストレッチ」の普及に尽力している。著書に『体がやわらかくなると血管が強くなる』(アスコム)。

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