世界は東日本大震災からの復興計画を注視、過剰な自粛ムードによる経済縮小を回避せよ《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》
夏場の高需要期に向けて計画停電の規模は拡大されるかもしれず、これでは国民に相当なストレスがたまる。また、被災者のストレスはそれ以上だ。衣食足りても、未来が見えなければ、精神的苦痛は計り知れない。
足りない電力を調整するために電気代が上昇する可能性も高い。そうなると企業の生産コストも上がる。長期的には、省エネや代替エネルギーの技術が進歩しそれらの課題を解決しながら新しい産業を作っていくだろう。しかし、短期では産業の空洞化を促進しかねない。電気代に加えて、消費までが縮小してしまえば、企業にとって、日本にとどまる動機はいよいよなくなる。
大企業が、電気代高騰によるコスト増や自粛ムードによる経済縮小を嫌い、海外展開のスピードを高めるだけでなく、日本でさらなるリストラを断行するだろう。結果として、春先に内定取り消しや生産拠点の統廃合があるかもしれない。これはさらなる雇用問題に進展する。
このような経済縮小を食い止めるためにも、一にも二にも、復興計画である。まずは、被災地の方々が希望を持てるようなものであるべきだ。地域がより豊かでより安全でより活力にあふれるものとなるように。
次に日本全体の成長機会が上がるようなものであるべきだ。被災地はもとより、この震災を契機に、都市インフラ再整備から首都機能分散まで視野の広い長期のビジョンを提示し実施すべきだ。
そして、復興計画は世界からの投資を引き付けるようなものにすべきだ。エネルギービジョンや税や各種規制や社会参画の機会も含めて、あらゆる制度を既成概念を取り払って、時代を先取りするものに変えていくのだ。政治や政府だけでなく、民間企業や国民の叡智を広く結集したものにすべきだ。日本人全体の力が問われている。
世界は相変わらず、日本人個々人を評価し続けている。今度は、この世界を復興計画で驚かせようではないか。「日本人は復興のプランも持っているのだ」と。「世界が、この国の未来に賭けることは十分意義があるのだ」と。
たむら・こうたろう
米イェール大学マクミラン国際関係研究センターシニアフェロー。前参議院議員(民主党)
写真は本文とは関係ありません。撮影:今井康一
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら