米コロンビア大学の伊藤隆敏教授は5日、日本銀行のインフレ目標政策について、今後も目標水準の2%を変更する必要はないとの見解を示した。一方で、2%を中心に許容範囲を明示したり、政府と日銀の共同声明の表現を変更したりすることはあり得ると語った。内閣府経済社会総合研究所(ESRI)主催のフォーラムで述べた。
伊藤氏は、日本経済がデフレ状況から脱却したという観点では日銀のインフレ目標政策は「成功した」と述べ、今後も同政策の枠組みは維持すべきだとの認識を示した。2%の水準についても、諸外国の多くの中央銀行が採用していることなどから、「積極的に変更する理由はない」と語った。
その上で、2%を中心に上下1%ポイントや0.5%ポイントといった「許容範囲を明示」する可能性はあると指摘。さらに、政府・日銀の共同声明で2%の物価安定目標を「できるだけ早期に実現することを目指す」とした部分について、「中期的、平均的に2%維持といった表現に変えるということはあり得る」と述べた。
伊藤氏は、黒田東彦日銀総裁の財務官時代に副財務官を務めるなど親交が深く、インフレ目標政策を指南したとされる。ブルームバーグの調査では、来年4月に任期満了を迎える黒田氏の後任候補とみる日銀ウオッチャーもいる。
日銀の政策委員会メンバーらの物価見通しの上方修正が続く中で、賃金の上昇率が今後高まり、現在のコストプッシュ型の物価上昇がデマンドプル型に変化すれば、2%の物価安定目標が達成される可能性があると指摘。円安回避のために利上げをすれば、「必要のない不況を引き起こしてしまう可能性がある」との見方を示した。
また、「インフレ率だけを目標にしていれば経済がどうなっても構わないということではない」とし、実体経済も考慮して政策運営を行う「弾力的インフレ目標政策」が現在の共通認識になっていると説明。新型コロナ前に需要超過と完全雇用を実現した日本のインフレ目標は「その意味で成功」としたが、インフレ期待を2%にアンカーできなかったことは失敗とも語った。
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著者:Bloomberg News
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