キー局決算、放送収入減でも見えた「変化の兆し」 ウェブへの本格適応がようやく見え始めた
9月時点で月間1.6億PVとなり、ニュースのデジタル配信収入は前年同四半期比プラス88.2%に。外部販売、広告収益ともに好調だとしている。現時点ですでに、新聞社系サイトを含む、ネットニュースサイトにとって大きな脅威になっていると言えるだろう。彼らはテキストの知見こそあれ、動画を作ることには長けていないからだ。
Web3(ウェブスリー)と呼ばれる、分散型の次世代インターネットに乗り出す局も増えてきた。テレ東は10月、NFTゲームプラットフォームを手がけるDigital Entertainment Asset(DEA)社へ220万ドル(約3億円)を出資。ブロックチェーン技術を用いて、唯一性を担保するNFT(非代替性トークン)の活用を模索している。
テレビ朝日の「光と星のメタバース六本木」や、フジテレビの「バーチャル冒険アイランド」のように、リアルイベントで培ったノウハウを、メタバース(仮想空間)に応用するパターンも。くしくもコロナ禍による巣ごもり需要に、技術進歩のタイミングが重なった形だ。
こうした事例を見ていると、「テレビ局そのものがジリ貧」というよりも、「従来のテレビビジネスに限界が来ている」ということがわかってくる。
お茶の間でブラウン管を囲む時代から、一人ひとりがスマートフォンで楽しむ時代へ。消費がニッチ化している以上、発信側も「マスありき」の前提を変える必要がある。前述した動画ニュースのテキスト化はその一例だろう。ニュースを動画で届けるだけでなく、テキストでも届けるのはそれ相応の負担があるが、そうすることで配信経路を増やし、多様なニーズに応えることができるのも事実だ。
「通信と放送の融合」なる言葉が話題になってから、20年弱が過ぎたが、ようやく融合が進み出したように、筆者には思える。
テレビ局は「巨大コンテンツ制作会社」になっていく
放送局(とくにキー局)の強みは、コンテンツ制作に資金力と人的資本を大量投入できる点にある。巨大なセットを使い、著名なタレントを起用する。これは決して簡単にできることではない。ウェブメディアは数が多いから広告費の総額ではマスメディア4媒体を上回っているだけであり、1社あたりのパワーはまだまだ圧倒的にテレビ局のほうが上だからだ。
また、そうして生み出された作品は、初回放送(配信)だけでなく、ストック型の資産として、長期的な収益源となるポテンシャルも持っている。販路さえあれば、その番組フォーマットを諸外国に売ることもできるだろう。来年Amazonプライムビデオで復活予定の「風雲!たけし城」(TBS、1986〜1989年)などは、まさにその先駆けといえる。
テレビ局が復権する道としては、この方向性しかないであろう。そして、これは他の業界、たとえばウェブ業界にとっても他人事ではない。放送局が今以上にウェブに力を入れ、良質なコンテンツをコンスタントに制作することができれば、資本力の大きくない多くのウェブメディアは、間違いなく多大なダメージを受けるからだ。
ウェブメディア出身の筆者個人としては、「眠れる獅子」のままでいてほしいのが本音だが、一方で、結果的にそれがウェブメディア業界を令和時代にアップデートするきっかけにもなる可能性もあるだろう。それぐらい、テレビ局の変化が、ウェブ業界に起こすであろう変容は大きいのだ。
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