「いじめから30年過ぎても殺したい」47歳男の半生 悲劇を生み出さないために社会ができる事とは

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以上のようなことを指摘すると、トモカズさんは「すぐ怒ってしまうところはあるかもしれない」と話す。一方で白紙の領収書については「僕が客に渡すとき店長も横にいました。だったらそのときに注意してくれればいい」、コンビニでの勤務については「レジ前にいろと言われればそうしますよ。言われなければわからない」と主張した。

病院に行くためのお金も交通手段もない

トモカズさんは、自分は発達障害なのではないかと思っているという。ただ診断は受けていない。「お金も車もない。いじめが原因でパニック障害になったので電車に乗ることもできない。僕だって原因を知りたいですが、病院に行くお金も交通手段もないんです」。

たしかに車の運転が苦手、具体的な指示が必要といった傾向は発達障害の特性の1つとして指摘されることはある。トモカズさんの仕事が長続きしないのは発達障害が原因の可能性はあるだろう。

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少し変わった人たちを「使えない」「同じ部署にいたら迷惑」などと言って職場や会社から排除する風潮について、トモカズさんは「そんなことを言う人のほうが器が小さい。この世の中のほうがおかしい」と語気を強める。そのとおりだと思う。変わるべきは不寛容な社会である。そのうえで発達障害の特性からくるトラブルを防ぐため、発達障害当事者と定型発達(発達障害ではない人)の双方が歩み寄る。そうした努力はもう少しなされてもよいのではないか。

ひきこもり状態になってから10年余り。現在トモカズさんは自らの障害年金約6万円と、同居する母親の年金同4万円で毎月の暮らしをやりくりしている。ガス代の節約を兼ね、冬場などは2、3カ月風呂に入らないこともざらにある。母親は80代なので「8050問題」の一歩手前の状態。同級生らへの電話などは数年前からやめているが、「殺したい」という感情が消えたわけではないという。

「未来は真っ暗。とりあえず(いじめ加害者の)3人をまだ殺していない自分をほめてやりたい」

トモカズさんに話を聞いていて、ハッとしたことがある。トモカズさんが「殺したい」という憎悪にかられて同級生たちを問い詰め、匿名電話をかけるようになったのと、ひきこもり状態となり、社会とのつながりが途絶したのが、ちょうど同じ時期だったことだ。もしトモカズさんが働き続けることができていたら、はたしてそこまで追い詰められただろうか。居場所を奪われることの孤独を思う。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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