「いじめから30年過ぎても殺したい」47歳男の半生 悲劇を生み出さないために社会ができる事とは

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大学卒業当時は就職氷河期だったこともあり、就職活動は思うように進まなかった。なんとか職を得ても、「周囲のパワハラのせいで」どの仕事も長続きしない。アルバイトも含めると10回近く転職を繰り返した。30代半ばにうつ病で障害者手帳を取得してからは、定職に就いていない。現在は公営住宅で暮らす母親と同居。事実上のひききもり状態である。

そしていじめた同級生らに対してあらためて憎しみと怒りが募ったのもまた、ひきこもり状態となった30代半ばのころだった。

いじめてきた同級生と偶然再会

きっかけとなった出来事は、近所のスーパーで中学、高校と執拗に自分をいじめてきた同級生と偶然再会したこと。トモカズさんが殺したいという3人のうちの1人である。そしてその瞬間、トモカズさんの脳内をさまざまないじめを受けた記憶がよみがえった。気が付くと同級生に近づき、怒気を含んだ声で詰め寄っていた。

「おいっ! お前、中学のときボールぶつけてきたよな」

同級生は最初、トモカズさんのことがわからず驚いた様子だった。その後、にやにやしながら立ち去ろうとしたので、追いかけて問い詰め続けると、最後は何も買わず店から出ていったという。「売り場にあった包丁で殺してやりたいという気持ちをなんとか抑えました」とトモカズさんは振り返る。

その後、トモカズさんはタガが外れたように直接的な行動を取るようになる。対象はいじめの中心人物だった同級生3人。道で出くわすと、謝罪するよう求めたり、当時奪われた金を返すよう迫ったりした。また、非通知や匿名で、自宅や職場に電話をかけた。居留守を使われたと感じると、家族相手に怒鳴り声を上げることもあったという。

3人を相手取って裁判を起こしたいと考え、法律事務所に相談もした。しかし、刑事上はもちろん、民事上の損害賠償請求についても時効が成立していると言われてしまった。

とはいえ、非通知や匿名での電話は警察に通報されかねない行為なのではないか。それにトモカズさん自身が名乗らないと、相手も反省のしようがない。これに対し、トモカズさんはこう主張する。

「たしかにすれすれの行為かもしれません。でも、僕はずっと独りで傷ついたまま生きてきたんですよ」

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