「プラスチックを加熱する人」が知らない健康被害 感熱紙レシートや化粧品、加工食品にも注意
プラスチックは一見不活性のようだが、中の化学物質はそうではない。「プラスチックに使用されている化学物質の中には素材との結合が弱いものがあり、とくに熱を加えると簡単に溶け出してしまう」と、ワシントン大学「シアトル子ども研究所」の小児科医で研究者のシーラ・サティアナラヤナ氏は言う。
前出のトラサンデ氏によると、プラスチックに含まれる化学物質のうち最も懸念されるのはフタル酸エステル類とビスフェノール類の2つだ。フタル酸エステル類はプラスチックに柔軟性を持たせるために添加され、食品用ラップフィルムやビニール床材のほか、消臭剤、マニキュア、ヘアジェル、シャンプー、石鹸、ローションなどにも使用される。
BPAを含むビスフェノール類は水やジュースのボトル、食品容器、眼鏡レンズといったポリカーボネートに使用されることが多く、食品や炭酸飲料などの缶の内側のコーティングにも使われている。
フタル酸エステル類とビスフェノール類が内分泌撹乱物質として作用、つまり体内のホルモン物質を模倣して干渉することを示唆する研究は多数存在する。フタル酸エステル類とビスフェノール類の危険性に関する初期の研究はネズミを対象にしたものだが、最近の研究では人間への悪影響との関連が示されるようになっているとトラサンデ氏は言う。
生殖機能低下、糖尿病や心臓病のリスクも上昇
例えば、人間を対象にした研究では、子宮でフタル酸エステル類への暴露量が高まると、子どもが小児喘息を発症しやすくなることがわかっている。男児の場合は行動障害を起こしやすくなるほか、肛門と生殖器の間の距離が短くなる。
後者は、成長してからのテストステロンの分泌量や精子の質の低下と関連づけられている。成人男性がフタル酸エステル類に暴露された場合は精子の数が減少し、妊婦の場合は甲状腺ホルモン値の低下や早産につながりやすくなる。
一方、BPAはエストロゲン(生殖機能の発達に重要なホルモン)を模倣することがあり、男女の生殖能力の低下、女児の思春期の遅れ、男児の思春期の早まり、子どもの行動障害につながるとされている。