「プラスチックを加熱する人」が知らない健康被害 感熱紙レシートや化粧品、加工食品にも注意

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さらに、フタル酸エステル類やビスフェノール類などの内分泌撹乱物質への暴露と2型糖尿病、心臓病、肥満のリスク上昇の関連を示す証拠も増えている。2021年の調査研究では、食品や消費者製品、環境からこうした内分泌撹乱物質にさらされると、運動不足や食生活の乱れといった一般的な原因と同程度に肥満のリスクが高まる可能性があると指摘された。

暴露量を少しでも減らす工夫を

科学は発展途上であり、調査結果の中には一貫性がないと論争を呼んでいるものもある。それでも研究で示されたエビデンスは全体として見れば十分に説得力があり、内分泌撹乱物質を避けることは、とりわけ妊娠中、乳児期、幼児期、思春期など発達に大きな影響を与える時期には価値がある、とカリフォルニア大学バークレー校の「環境研究と子どもの健康センター」で副所長を務める生殖疫学者、キム・ハーレイ氏は語る。

救いなのは、フタル酸エステル類やビスフェノール類は体内に永久に留まるわけではなく、変化を起こせばすぐに効果が得られるという点だ。「暴露量を減らせば、数日のうちにこれらの化学物質を体外に排出することができる」とハーレイ氏は言う。こうした化学物質を生活から完全に排除することは不可能だが、少しでも減らすことができれば大きな効果が期待できるとハーレイ氏は付け加えた。

対策1:加工食品はできるだけ避ける

ファストフード店やコンビニ、スーパーなどで売られている加工食品は便利で必要な場合もあるが、高濃度のフタル酸エステル類が含まれている可能性がある。また、ある種の肉製品や乳製品といった高脂肪食品には、ほかの食品よりもフタル酸類が多く蓄積される場合があることが研究によって指摘されている。

ビスフェノール類などの化学物質は缶詰の内側のコーティングに潜んでいることがあるため、スープ、ソース、飲料などはガラスの容器に入ったものを選んだほうが安全だ。サティアナラヤナ氏によれば、冷凍食品に使われるプラスチックの包装から化学物質が溶け出す可能性は低温のためかなり低くなるという。

対策2:プラスチック容器の使用を避ける

ビスフェノール類は食べ物や飲み物を保存するプラスチック容器に含まれていることがあるので、哺乳瓶、シッピーカップ、食品保存容器、水筒などは、できるだけ金属製かガラス製のものを使いたい。

FDAは2012年に哺乳瓶とシッピーカップ、2013年に乳児用粉ミルクの包装にBPAを使用することを禁じたが、「BPAフリー」と表示されている製品であっても、健康にBPAと同様の影響を及ぼす別のビスフェノール類が使用されている可能性がある。

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