足元での高インフレが和らぐ兆しは、FRBの政策対応がようやく功を奏していることを意味する。評価はさまざまだが、賃金とインフレのスパイラルが起きて、大インフレ(Great Inflation)が起きた1970年代同様の状況に至らずに、FRBによる政策対応によってインフレが制御されつつある、という評価になるのではないか。
FRBは市場の信認を取り戻せるのか?
これまでの高インフレは、コロナ対応で繰り出した金融財政政策のやりすぎと、コロナ下での供給制約が重なったことで起きたと筆者は考えている。アメリカの労働市場での供給制約の問題が根深くインフレ要因が残るにしても、金融財政政策を「吹かしすぎた」ことがもたらしたインフレ上昇は、金融財政政策の引き締めによって2023年に向けて巻き戻されてもおかしくない。
インフレの和らぎをうけて、FRBによる利上げ停止が見えたという意味で、利上げ局面は終盤戦に入りつつあると言える。FRBの対応に対する不確実性が和らぐことで、FRBは金融市場の信認を取り戻せるだろうか。実際には、まだ紆余曲折が予想されると考えている。
金融市場では、足元のCPI下振れで、政策金利の利上げ到達点に関する見通しは、4%台に一時低下した。仮に筆者が想定するようにインフレが最悪期をすぎたとしても、CPIコアが前月比ベースで0.3~0.4%程度で推移、労働市場の減速が緩やかにしか進まない2023年1~3月中は、FRBによる利上げが続く可能性が高い。
パウエルFRB議長は11月初旬に、利上げの到達金利を以前から引き上げる考えを示した。その後、ブラード・セントルイス連銀総裁が最低限5%の利上げが必要との試算を示した。
同氏が依拠する「テイラールール」は前提条件等で水準が変わる1つの参考値だが、早期利上げを先導してきたブラード総裁の考えは、パウエル議長ら執行部に相応に重視されるのではないか。経済やインフレ指標が双方ともに大きく失速しなければ、12月FOMC(連邦公開市場委員会)以降利上げペースを緩めるとしても、FRBは2023年3月まではタカ派姿勢を維持して5%超まで利上げを続ける可能性が高い。
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