習近平「微笑外交」に日本はどこまで応えるべきか 3年ぶり首脳会談は「対日関係修復」のシグナル
ASEANが位置する東南アジアは、米中が向き合うインド太平洋の地理的中心にあり、南シナ海におけるアメリカの「航行の自由作戦」に中国が反発するなど、米中対立の前線でもある。
また、マラッカ海峡を経由することなく陸上からインド洋にアクセスできるルートという意味でも中国にとってASEANは重要である。中国としては、ASEANとの関係は経済・政治・安全保障といったすべての面で重要であり、優先的な外交関係の調整相手と言える。
3年ぶり日中首脳会談の意義とは
11月17日の日中首脳会談は、少なくとも今後5年間続く習近平の中国と向き合っていくスタートとして非常に大きな意義があった。日中関係は、2021年春ごろから日米2プラス2(外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会)共同声明における台湾に関する記述や、福島第一原発の処理水をめぐる問題等に中国側が反発することで低調が続いていた。
岸田首相就任時の電話会談(2021年10月)において、習近平から国交正常化50周年の重要性について言及があったにもかかわらず、中国国内では一部の地方で50周年イベントがキャンセルされるなど、日本との関係を進めることに萎縮する雰囲気があった。
しかし、17日の会談で、習近平は笑顔で岸田首相と握手し、「日中関係の重要性は変わっていないし、変わることもない、新しい時代の求めに合致した日中関係を築いていきたい」と日中関係の重要性を強調した。
また、中国側の発表した会談の事後発表は、台湾や海洋の問題といった難しい問題よりも、政府や政党間の交流や青少年交流、デジタル経済やグリーン経済、財政金融、医療介護といった分野での協力を進めることについてより多くの文言を費やした。
中国外交部は、会談後に、事後概要とは別に、「5点の共通認識」と題する文書を公表し、上記に加え、日中経済ハイレベル対話や海洋部門間の意思疎通を実施することで合意した旨発表した。今回の一連の首脳会談において、中国側が会談終了後に事後概要だけでなく、それを補足する文書を公表したのはアメリカ(王毅による記者ブリーフ)と日本のみである。
今回の会談は、中国国内に対して、日本との交流や経済関係を萎縮することなく進めていいのだという明確なサインを送るものであり、日中関係の難しい局面を前向きな方向に変えたいという中国側の意図の表れだと考える。
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