習近平「微笑外交」に日本はどこまで応えるべきか 3年ぶり首脳会談は「対日関係修復」のシグナル
先般の党大会における活動報告は、対外関係について「総体的に安定し、バランスのとれた大国との関係の発展」と「周辺国家との友好、相互信頼と利益融合」を追求するとしている。3期目に入った習近平外交の調整の中心は、まずは欧米諸国とASEAN(東南アジア諸国連合)が中心になるのではないかと筆者は見ている。
実際に、党大会終了後に習近平が最初に中国へ迎えた外国要人はベトナム共産党総書記であり、ドイツ首相が続いた。また新たに党中央政治局員となった国務委員兼外交部長である王毅の党大会後の会談相手は、ASEAN諸国外交団、アメリカ駐中国大使、同国務長官、フランス外相といった名前が目立つ。
欧米諸国との関係では、新疆ウイグル自治区や台湾をめぐる問題でこれまでもさや当てが続いてきており、中国が関係を調整する必要性には多言を要しないであろう。
ASEANを中国が重視する理由は
ASEANは「一帯一路」構想における主要な投資先であるなど、経済貿易面での結びつきも強い。また、中国の周辺国家が多く参加しており、中国が「利益を擁護する」としている発展途上国による東南アジア地域の地域組織である。
2021年には中国ASEAN関係樹立30周年を記念した首脳会議が行われ、共同声明を発出する等、緊密な関係を築いているようにも見える。しかし、本年8月のペロシ米下院議長による台湾訪問に対して出されたASEAN外相のステートメントには「ASEAN外相はそれぞれの国の一つの中国政策に対するASEANメンバー国による支持を再度表明する」としか記されていない。
つまりASEAN外相が支持しているのは「中国(または中国の台湾政策)」ではないうえに、一つの中国政策が「それぞれの国の(their respective)」とされていることは、国によって「一つの中国」の含意が異なることを意味する。中国が核心的利益の核心とみなす台湾において、ASEAN諸国からはこの程度の意思表明しか取り付けられていない。
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