フィンランドが「IT大国」になった予想外の理由 地理的理由から考えるIT産業発展のワケ

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フィンランドのIT産業発展の特徴は、ひとえに産官学協同が挙げられます。IT産業を中核としたサイエンスパークの建設、起業家支援などを進め、競争力を付けてきました。先に述べたように、フィンランドは研究開発費を増額し、特に研究開発費の政府負担比率を高めていきました。これが功を奏したのか、1990年代後半にはその成果が現れ始め、研究開発費の民間負担比率も大幅に高まりました。

フィンランドのIT産業発展の施策としてよかった点は、研究開発に力を入れただけでなく、それを支える人材育成を同時に行ったことです。つまり教育環境の整備を重視していた点は見逃せません。

スイスのローザンヌに拠点を置くビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)が発表する、「世界競争力ランキング」によると、フィンランドは2022年に世界8位と、前年の11位から3つ順位を上げています。

ちなみに、2008年が15位だったことを考えると、着実にその評価が高まっていることは間違いありません。この手の指標は、ヨーロッパ人によるヨーロッパ人のためのランキングであり、日本のランキングはだいたい低かったりするのですが、それを差し引いてもフィンランドの教育水準が高いことは間違いないでしょう。

政府が「産学連携」へ方針転換

フィンランドでは、1978年まで大学の研究者と民間企業との共同研究が禁止されていたという、今では信じられないような決まり事がありました。しかし、やはり人口小国としての生きる道を本気で考えた結果、「国益の源は技術革新によって生まれる!」との思念に基づいて政府が研究開発費を負担して産官学協同を推進してきました。それはソビエト崩壊後の財政難の時にも変わることはなく、むしろ大幅に増額されたほどです。

時は1958年、フィンランド中部に位置する、オウル市にオウル大学が設立されます。それまでのフィンランドは、首都ヘルシンキにあるヘルシンキ大学(設立1640年)を目指す若者が多く、いわゆるオウル市からの人口流出、つまり「頭脳流出」が起きていました。しかし、オウル大学の設立により、優秀な若者が地元へ残るようになったといいます。

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