フィンランドが「IT大国」になった予想外の理由 地理的理由から考えるIT産業発展のワケ

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オーロラ、フィンランド
フィンランドでIT産業が発展した地理的な理由とは(写真:かメ吉/PIXTA)
ムーミンやサウナなどで日本人にもなじみ深い北欧諸国のフィンランド。日本では福祉大国として知られるが、実は「次のシリコンバレー」と目されるほど、ハイテク産業も盛んだ。本稿では代々木ゼミナールのカリスマ地理講師、宮路秀作氏著『ニュースがわかる!世界が見える!おもしろすぎる地理』から、フィンランドがハイテク先進国になった理由を解説する。

人口が少ない国がGDPを上げるために

北ヨーロッパ諸国の人口(世界銀行統計、2021年)を見ると、フィンランドの人口は554.2万人と、人口大国と呼べる国ではありません。

人口が少ない国がGDP(国内総生産)を増やしていくためには、1人あたりGDPを高める傾向がありますので、「医薬品」など高付加価値製品に注力していきます。また、IT産業の成長、それを支える、いわゆる「高度人材」と呼ばれる人材の育成もまた、GDPを増やしていくために重要なことです。

北欧の国々は高緯度に位置して寒冷な気候環境下にあるため、通信インフラの整備、点検にはなかなか苦労します。そこで北欧では、無線で結ばれるインターネットの利用が早い段階から進んでいました。

フィンランドの国土面積に占める森林面積割合は73.73%と非常に高く、豊富な森林資源を活用した製紙業やパルプ業といった産業、それに付随する抄紙機の生産といった機械製造業など、林業関連産業が国家経済を支えています。

こうした産業構造にIT産業が加わったのは1990年代。フィンランドを代表する通信インフラや無線技術を開発するノキアが設立されたのは1865年で、当初は製紙会社でした。その後、ゴム製造会社の「フィンスカ・グミ」、電話・電信ケーブル製造会社の「フィンランド・ケーブルワークス」との資本関係を結び、1967年に3社は合併して現在に至ります。こうした経緯があって、製紙会社として設立されたノキアは世界を代表する開発ベンダー企業へと転換していきます。

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