オンライン会議で顔を隠すと会議が長引く理由 マイクをミュートにしても会議は延びてしまう

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また、「最初だけでいいので、カメラをつけてくれませんか」「久しぶりにお顔を拝見したいので、最初のうちだけカメラをつけてくれますか」という言い方もおすすめです。

「会議の間、ずっとつけていてください」ではなく、「最初だけ」と相手に譲歩するかたちをとることで、心理的なハードルを下げることができます。

このような言い方でお願いすると、比較的カメラをオンにしてもらいやすいでしょう。最初にカメラをつけると、その後もだいたいつけ続けてくれるものです。

ミュートを解除し相づちを打つと会議が早く終わる

以前、ある会社の方からこんな話を聞きました。1on1のミーティングをしているとき、相手の後輩が毎回ミュートにしているため、話のテンポが悪くなって困っているというのです。

先輩が、なぜミュートにしているのかと尋ねたところ、後輩は、「オンライン会議ではマイクをミュートにするのがマナーじゃないんですか?」と答えたそうです。新型コロナウイルスが流行し始めた当時、ウェブのニュースやSNSで、「オンライン会議では、発言時以外マイクをミュートにすべし」と、盛んに言われたのを覚えているでしょうか。

そこに書かれていたのは、「人数が多い会議やセミナーでは、ミュートにしておくのがマナーです」ということでした。なぜなら、人数が多ければ多いほど雑音の発生や発言のかぶりが起きやすくなるからです。そのため、「人数の多い会議では、ミュートにしよう」という記事が出たのだと思います。

ところが、「人数の多い会議では」の部分が抜け落ちてしまって、「オンライン会議ではミュートにするのがマナーです」という、間違った認識が広がってしまいました。そのせいで、人数が少ない会議や、1対1の打ち合わせでも発言時以外マイクをミュートにする人が増えてしまったのです。

また、「オンライン会議では相づちを打たなくていい」と思っている人もいますが、これもやはり、「人数が多いときは」という前提条件が抜け落ちてしまっています。参加人数が少ないときは、相づちを打ったほうがいいのです。何人以上を「人数が多い」とするかと言うと、およそ6人以上です。ですから、それ未満の人数で行うオンライン会議であれば、全員がミュートを解除して、相づちが聞こえるようにしたほうが、会議が早く終わります。

話している側からすると、対面の会議のときと同様に参加者から相づちが聞こえたほうが、自分の話が伝わっていることが実感できるからです。「うんうん」「ああ、なるほど」と言ってくれることによって、「ああ、ちゃんと伝わったな。じゃあこの話はもうここで切り上げていいな」と判断できます。意思疎通がきちんと図れるので、自然と会議が短くなるというわけです。

ところがマイクがミュートになっていると、相手が理解しているのか、していないのかが、いまひとつわかりません。そうなると、「伝わっていないみたいだから、補足したほうがいいかな」というように、不安のあまりつい余計な情報までどんどん話してしまう。だから会議が長引くのです。

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なお、自分がいる場所の周辺が工事中で騒音がうるさい、犬が吠えている、まわりに人がいて会話をしているというようなときは、少人数の会議であっても発言時以外はミュートにしておきましょう。

ただ、よく「まわりが騒がしいのでミュートにしているんです」という人がいますが、そもそも騒がしい場所からオンライン会議に参加することは、極力避けるのが基本です。子どもやペットが飛び入り参加するのを微笑ましくていいと思う人もいる一方、そうは思わない人もいます。

また、会社の執務室などから会議に入ると、周囲の会話から情報が漏洩する恐れもあります。「取引先のA社、〇○な噂があるらしいよ」という同僚の会話を、A社との会議中のあなたのマイクが拾って、相手に聞こえてしまうかもしれません。「オンラインの会議だから、ネットにつながればどこでもいいや」という考えは改めたほうがいいでしょう。

一般社団法人オンラインコミュニケーション協会

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『画面越しのコミュニケーションをよりスマートに、より豊かに』というミッションを掲げ、ZoomやTeamsなどに代表されるオンライン会議ツールや、Slack等のチャットツールを活用した画面越しのコミュニケーションに関する調査、研究を行う。2022年1月に発表した「オンラインコミュニケーションにおけるストレスに関する実態調査」の結果は、Yahoo!ニュース等、多くのメディアに掲載され注目を浴びた。これまでサポートしてきた企業や団体、ビジネスパーソンは、300社、1万人を超える。

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