ジム・ロジャーズ「日本は英国のように没落する」 ワタミの渡邉美樹氏が「日本の深刻度」を聞いた

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渡邉:私は今後の日本の財政について、破綻も含めてさまざまなシナリオを考えています。1つは国債の格付けが大きく悪化するということです。もう1つは、今行っている事実上の財政ファイナンスが許されなくなることです。また、あなたがおっしゃっているように、国内の反乱などがあるかもしれません。何らかのトリガー(引き金)があって、日本は将来、財政破綻に行き着くのではないかと危惧をしています。 

ロジャーズ:日本がこのままなら、今後、国債の格付け低下と、英国のようにマーケットから懲罰を受けるという、その両方が間違いなく起きると思います。英国のように、市場が荒れて、格付けも下がるでしょう。

渡邉:もし国が破綻をしたら、一部の経済学者たちはIMFの救済が入るし、さすがにハイパーインフレが進んだ第2次世界大戦後のドイツのようにはひどくならないのではないかという期待を持っている人たちがいます。例えばIMFはどのように動くのでしょうか。

サッチャー首相の改革の裏には「北海油田」があった

ロジャーズ:IMFがしっかり助けてくれるというような考えは完璧な間違いです。私はIMFの救済はあくまで短期的なもので、傷口に絆創膏を貼る程度のものだと思っています。日本が抱える長期的な問題を何も解決させることはないと思います。

20世紀前半まで、英国は世界で最も裕福な国でした。しかし、その後にお金を使い続け、1976年に危機に陥り、IMFの救済を仰ぎました。そして、幸運にも北海油田を見つけ、(すべての権益が英国のものではないとはいえ)1970年代の後半、本格的に稼働し始めました。

もし、日本が今、当時の英国の北海油田のように新たなエネルギー資源を見つければ、今後はなんとかなるでしょう。実際、英国は1981年から2005年までは石油の純輸出国となり石油が外貨の獲得に大きな貢献をするようになったのです。その結果、1992年から2008年まで、英国は連続してプラス成長を続け、期間中の2001年にブレア政権が「英国病克服宣言」を行うことになりました。ですので、石油、ウラニウム、金などの何らのコモディティーを見つけてください。

渡邉:英国ではマーガレット・サッチャー首相(1979年~1990年)が危機のときに出てきて、非常に強い財政改革を行いました。これは北海油田の発見との両輪だったと感じます。日本も成長産業や国民の意識の変革が大切なのではないでしょうか。

ロジャーズ:確かにサッチャー首相の改革は非常にアグレッシブでした。しかし、私は改革は北海油田があったからこそできたことだと思っています。北海油田がなければ、彼女は6カ月でクビになったのではないでしょうか。実際、サッチャー首相の前にも財政改革の必要性を説いた政治家はいましたが、彼らは長く持ちませんでした。ですから、英国を事実上救ったのは北海油田の発掘なのです。日本を救いたければ原油のようなコモディティーを発掘しないといけません。

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