W杯サッカー初の女性審判「山下良美」が開いた道 「もともと審判になる選択肢は頭になかった」

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山下さん:「女性初」と報道されて注目していただいて、少し緊張しましたね。
普段から全力を尽くして試合に臨んでいますが、それでも「もっとしっかりしなきゃ」とも思いましたし。

でも、報道後に初めてピッチに立ってみたら、実際はなんてことはなかったんですよ。やるべきことも見える景色も、いつもと変わらない。そこで感じるプレッシャーも、これまで通りのものでした。

こういうことは、スポーツの世界に限らずあることだと思います。仕事で責任あるポジションに抜擢されて「私にできるかな」と不安になってしまう女性も多いと思うのですが、まずはやってみるといいと思いますよ。

やってみれば、意外と「なんだいつも通りのことをやればいいんじゃん」って肩の荷が降りることもありますから。

また、男子の試合に女性審判がついていけるのか? という疑問を持つ人もいるかもしれない。しかし、山下さんによれば「やることは一緒で、大きな差はない」という。

いざW杯カタール大会へ

22年11月開幕のW杯カタール大会には、日本人唯一、そして大会初の女性主審の一人として参加する。その一報が届いた時は、「正直に言うと驚いた」と本音をこぼす。

(撮影: Thananuwat Srirasant)
山下さん:今はもう、しっかり覚悟も決まっています。

本番ではサッカーの魅力を最大限に引き出せるようなレフェリングをして、皆さんに楽しんでいただけたらと思っています。

そのための体力づくり、語学学習も日々欠かさない。

山下さん:フィジカルを鍛えることも、プロとして必要な語学力を磨くことも、どちらも毎日の積み重ね。

今週はこんなメニューでやってみよう」「今日はこんなふうにやってみよう」とプランを立てて、筋トレも勉強もやるようにしていますね。
(写真:woman type)

「以前は、ヨーロッパ最高峰のUEFAチャンピオンズリーグで活躍する女性審判員の姿を、どこか他人事のように『すごいな~』なんて思いながら見ていた」と山下さん。

しかし、目の前の仕事に夢中で取り組んでいるうちに、いつの間にか彼女たちが活躍する場所に近づいていた。

山下さん:かつては全く想像もしなかったことですが、今年4月にAFCチャンピオンズリーグを担当し、私ももっと頑張らなければと思うようになりました。

プレッシャーは少しはありますが、日本でも海外でも、審判としてやるべきことは変わらないので大丈夫。

引き続き、後輩たちの「新しい道」を切り開く人になれたらうれしいです。そのためにも、とにかく一試合一試合、全力を尽くすこと。私にできるのは、目の前の仕事にコツコツと夢中で向き合っていくことですね。
【山下良美さん】
1986年東京都生まれ。2012年に女子1級審判員の資格取得。2015年、FIFAの国際審判員に登録。全国高等学校サッカー選手権大会、AFCカップ、2019年には女性ワールドカップ、2021年には東京オリンピックの審判を経験。そして同じ年に、Jリーグ史上初の女性主審をつとめ、2022年7月に女性審判としては初のプロフェッショナル契約を結んだ

取材・文/モリエミサキ 撮影/柴田捺美(編集部)
編集/栗原千明(編集部)

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『Woman type』編集部

「Woman type」は、キャリアデザインセンターが運営する情報サイト。「キャリア」と「食」をテーマに、働く女性の“これから”をもっと楽しくするための毎日のちょっとしたチャレンジをプロデュースしている。

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