福岡「暴力団本部の跡地」で牧師が挑む"街の再生" 福祉施設をつくる「希望のまちプロジェクト」

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最大の特徴は葬式だ。「お葬式は家族機能の最たるもので、家族以外しない。ホームレスや生活困窮者が亡くなっても、大半は引き取り手がいません。互助会では日頃から仲間と交流し、仲間でお葬式まで行う仕組みにしています」

教会の納骨堂には引き取り手のいない互助会会員らの遺影が並び、遺骨が納められている(撮影:佐々木恵美)

3つ目の目的は「まちが子どもを育てる」。抱樸では増え続ける子どもの貧困に伴い家族支援を行ってきた。しかし、片付けや料理、育児などの基本からまったくわからない親が多数いた。

「親だからやって当然という理屈が通らない。親でも自分がやってもらったことがなければできないんですよ」。まち全体で支援し、親から子へと引き継ぐサイクルをつなぐ必要があるのだ。

希望のまちの施設は4階建てで、2024年10月オープンを目指している。子どもが気軽に寄れる居場所や家族支援、よろず相談窓口、カフェや図書館、障害のある方の居場所、ボランティアセンター、コワーキングスペース、救護施設など多彩な空間を整備する予定だ。

希望のまちプロジェクトは、北九州市のふるさと納税でも応援できる(写真提供:抱樸)

総工費10億円のうち、国や市の補助金等を利用して7億円は目途が立った。残り3億円は2022年4月から寄付を募り始め、1億円を突破したところだ。「これは日本全体の社会課題に対するチャレンジです。多くの人に支えてもらえるとうれしい。うまくいけば全国に広げられるかもしれない」と、奥田さんは期待を込めて熱く語る。

「出会った責任を果たす」

牧師として、抱樸の理事長として、また国の政策立案や審議会などの委員として、日々奔走する奥田さん。そこまで駆り立てるものは何なのか。

「まあ、逃げ遅れたんですよ」と本人は冗談めかすが、抱樸が大切にしている「おんなじいのち」「出会った責任を果たす」という言葉が答えの一端のように思える。

最後に聞いてみた。「ところで、神様はいましたか?」。「今日も朝からお葬式で、もちろん悲しいけれど、そんな中でいいなと思えることもある。ときどき神様のかけらみたいなものを見ながら、みんなに『よし、やるで』と言ってるような牧師なんです」。そう言うと、奥田さんはふっと優しい笑顔になった。

佐々木 恵美 フリーライター・エディター

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ささき えみ / Emi Sasaki

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

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