福岡「暴力団本部の跡地」で牧師が挑む"街の再生" 福祉施設をつくる「希望のまちプロジェクト」
そんな中、2019年秋に、工藤会の本部事務所が解体撤去されるというニュースが流れた。奥田さんは「これだ」と思い、すでに売却先となっていた福岡市の会社の社長に会いに行き、買い取ることを決めた。
実は、奥田さんが事務所跡地にこだわったのには、もう1つ理由がある。
「跡地の住所は小倉北区神岳(かんたけ)。先ほどお話した、ホームレスが中学生に襲われた場所で、いわば僕らの活動の原点でもある。歴史的な必然性を感じました。そこで僕はハタと気づいたんです、あの頃やんちゃしていた中学生たちの一部は、居場所を求めて暴力団になったかもしれないと。
僕らはホームレスを支援してきたけれど、一方で救われない子どもたちはどうしているのか。長年の『宿題』を果たすためにも、あの場所をあらゆる人を対象にしたまちづくりの拠点にしようと思ったのです」
誰もが助け合い、助けてと言えるまちに
「希望のまちプロジェクトは、決して北九州だけの話ではない。大いなる実験なんです」と奥田さんは力を込める。希望のまちの目的は3つ。まずは「助けてと言えるまち」を作ること。
2020年、子どもの自殺は過去最悪の499人にのぼった。「子どもが助けてと言えない社会になっている。その原因の1つは、大人が他人に迷惑をかけてはいけないと言い続け、困っている人を自己責任と切り捨ててきたからでは。ここは健全に相互依存できる、助けてと言えるまちにしたい」
2つ目のキーワードは「まちを大きな家族に」。1980年、日本の全世帯の6割は親子か三世代の家族世帯だった。しかし2020年になると家族世帯は3割近くまで減り、一方で単身が4割ほどに。家族のいない単身者が増える中、抱樸では家族機能を社会化してきた。2013年に地域互助会を作り、月500円の会費で見守りやバス旅行、誕生会などを行っている。
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