牛の「ゲップ」で地球の気温が上がる"衝撃事実" 世界各地で広がる「地球温暖化」ビジネスの今

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徴収した税金は、ゲップ控えめな牛の品種改良だとか、メタンを抑制する牛用マスクの開発費用などに充てられる。酪農家のほうも、努力次第でご褒美が手に入るようで、海藻などを混ぜた特別食を与えてメタンの排出量を減らす工夫などをすれば、補助金がもらえるという。

ところで牛の尿は、土と混ざると二酸化炭素の300倍もの温室効果を持つ一酸化二窒素を発生させる。そこでニュージーランドのオークランド大学リンゼイ・マシューズ教授は、牛がきちんとトイレで用を足せるよう教え込む実験を行った。

牛の鳴き声の「ムー」、トイレの英語名「ルー」を掛け合わせ、「ムールートレーニング」と名付けた。振動する首輪、嫌な音が出るヘッドフォンに水しぶきなど、失敗すると罰を与え、反対にうまくいくと砂糖水を与えるという訓練を週3回10日間続けたら、大半の子牛がトイレに駆け込むようになった。

牛肉を食べることも罪? ミートレス時代の肉

ゲップにおしっこと、牛の排出物が温暖化を促進しないように対策が取られ始めている昨今、牛肉を食べること自体も、罪の意識を感じるような時代に突入し始めている。

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なんせ牛は大食漢で、たとえば鶏肉1キロを生産するのに必要な穀物はトウモロコシ換算で4キロ、豚肉なら6キロ、牛肉なら11キロにも及ぶ。そのうえ、使われる水の量も桁違いであるから、牛肉ステーキを頬張る代わりに、チキンステーキ、はたまた豆腐ステーキを食べれば環境負荷も小さくすることができる。

そこで近年、植物性の原料を使った「代替肉」や、細胞を培養して作る「培養肉」などの開発が進んでおり、先ほどのビル・ゲイツ氏もそうした産業に出資して後押しをしている。

このように、気候を操る技術を磨き、牛にも苦労を強いて、とりあえず温暖化対策の準備を加速させているが、肝心の人間自身が二酸化炭素の排出量を減らすという根本的な努力を怠っては、元も子もない。

こんな言葉がある。「宇宙船地球号に乗客はいない。いるのは、乗務員だけだ。」(カナダ人文明批判家、マーシャル・マクルーハン)。傍観している暇はない。1人ひとりが行動すべきときが来ている。

森 さやか NHK WORLD-JAPAN 気象アンカー

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もり さやか / Sayaka Mori

NHK WORLD-JAPAN 気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ、横浜で育つ。2011年より現職、英語で世界の天気を伝えるフリーの気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に『竜巻の不思議』『天気のしくみ』(共著/共立出版)。最新刊に「お天気ハンター、異常気象を追う 」(文春新書)、月刊誌『世界』での連載をまとめた『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)。「Yahoo! ニュース個人」では最新の天気記事を執筆。

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