停戦交渉への機運醸成に失敗したプーチン大統領 現段階での停戦交渉は時期尚早だ

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このため会議前、プーチン氏が欠席はしたものの、停戦交渉開始に向けた外交攻勢として「何らかの新提案をビデオメッセージとして会議中に送って来るのではないか」(ウクライナの軍事筋)との見方も出ていた。しかし、結局こうした新提案は示されなかった。さらに、交渉開始への国際的支持を集めるためのグッド・ウィル(善意の証)として、何らかの軍事的自制行動が行われるとの観測もあったが、これも起きなかった。

グッド・ウイルどころか、ロシアは11月15日、2022年2月の侵攻開始以降、最大規模となるインフラ施設へのミサイル攻撃を行った。ウクライナに軍事圧力を加えて、力ずくで交渉の場に引っ張り出すという強硬策一点張りの姿勢が浮き彫りになった形だ。クレムリンのペスコフ大統領報道官は、インフラ攻撃について「交渉を拒否するキエフ(キーウ)の権力に対する結果だ」とあけすけに語ったほどだ。

ウクライナ側の「10項目和平案」

一方でウクライナのゼレンスキー大統領は、G20で何ら動きを見せなかったプーチン氏とは対照的な行動に出た。会議でのオンライン演説で自身の「10項目和平案」を示し、会議でロシアに主導権を奪われる事態を回避したのだ。

これは、プーチン氏がG20に対し何らかの交渉開始提案を示す可能性を事前に念頭に置いた対抗策だったことは間違いない。ゼレンスキー氏としては「和平案」を示すことで、ウクライナが和平追求に後ろ向きすぎるとの国際的批判をかわす狙いだったとみられる。

侵攻開始から9カ月近くが経過し、国際社会の中で戦争継続への疑問の声も出始める中、ウクライナが懸命の外交を展開していることを象徴する動きだ。

もっとも「和平案」と銘打ったものの、中身を見れば、ゼレンスキー政権がただちにロシアとの交渉を行う考えがまったくないことが明白だ。2014年のクリミア侵攻以来、ロシアが占領した全領土の返還を意味する「領土の一体性の回復」と、ロシア軍のウクライナからの完全撤退を交渉開始の条件として挙げているからだ。この「和平案」をロシアが受け入れる可能性はゼロだ。結果的には、G20を経て交渉開始をめぐるウクライナとロシアの溝はむしろ広がったといえる。

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