「ミサイル着弾」欧米冷静でも消えない戦争リスク 局地的紛争か、世界を巻き込むのかの境界線

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バイデン大統領
ポーランドにミサイルが着弾した件について、アメリカのバイデン大統領はロシア製の可能性は低い、と慎重な姿勢を示した(写真:Ting Shen/Bloomberg)

NATOやアメリカの対応の速さもさることながら、その抑制的な対応に驚いた人もいるのではないだろうか。

11月15日にウクライナ国境にほど近いポーランドの集落に「ロシア製」と見られるミサイル2機が着弾し、死者が2人出たと報じられた。ウクライナ紛争が始まって以来、第3国領に被害が出たのは初めてのことで、世界に緊張が走った。

が、NATO加盟国で対露強行派であるポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領はすぐに閣僚会議を開催し、その後ミサイルは「ロシア製の可能性が高い」としつつ、「われわれは冷静に作業を進めている」とし、国民に対しても冷静さを求めた。

G20の首脳会合でインドネシアに滞在しているアメリカのジョー・バイデン大統領も「何が起きたのかを正確に究明したうえで次にとるべき対応について決定する」としつつ、「調査が完全に終わるまでは確かなことは言えないが軌道から考えると、ロシアから発射されたとは考えにくい」と発言している。

ウクライナはNATOの行動を促したが

対して、ウクライナのゼレンスキー大統領はというと、「今日、私たちがずっと警告してきたことが起こった」とし、「NATO領内へのミサイル攻撃はあり得るのだ。それは集団防衛へのロシアのミサイル攻撃である。それは非常に重大なエスカレーションだ。行動せねばならない」と強調したという。

ロシア国防省は、ポーランド国境付近の目標への攻撃はいっさい行っていないとし、モスクワの関与を疑わせるポーランド側の発表は挑発だと断じていた。

現時点では、ポーランドに着弾したミサイルはウクライナ軍の発射した迎撃ミサイルであるとされている(ロシアはこれをウクライナのS300と発表)が、この3者(NATO、ウクライナ、ロシア)の対応から一体何を読み取るべきだろうか。

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