「ミサイル着弾」欧米冷静でも消えない戦争リスク 局地的紛争か、世界を巻き込むのかの境界線

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まず、NATOから見ていきたい。NATO及びアメリカは常々対露強硬発言を繰り返し、ロシア政府を強く非難しているのであるが、今回は抑制的に対応し、冷静に事態を見極める姿勢を示した。

仮に、ロシア軍によるポーランド攻撃であると判断される場合には、NATO加盟国への攻撃が発生したということになり、北大西洋条約第5条の集団防衛義務が発動されることになる。つまり、NATO対ロシアの全面戦争となりかねない事態を引き起こす。当然、軽率な判断はできないはずである。

着弾は意図的なものか、偶発的なものか

もう1点注意しておくべきことは、仮にポーランド領内に着弾したミサイル2機がロシア軍によるものだったとしても、それがポーランドへの攻撃目的で行われたものなのか、それとも偶発的なものであるのかという問題がある。

偶発的事故にすぎないのであれば、これをNATO加盟国への攻撃だと見なすことはできず、防衛義務は発生しない。ロシアがポーランド国境付近への攻撃を否定している以上、わざわざNATO側がロシアによる攻撃だと主張する必然性は見当たらないのである。

実際、16日時点で、やはりG20サミットに参加していたNATO加盟国のトルコのエルドアン大統領は、「ロシアは無関係と言っているのだから尊重しなければならない、技術的な誤りかもしれない」と発言した。つまり、ロシアによる「攻撃」ではないとの受け止めを表明して、事態の誤ったエスカレーションを防止しようとしたのだ。

つまり、現時点で、ロシアにせよ、NATOにせよ、全面対決を望んでいるわけではないことは明らかである。

では、こうしたNATOの対応とはまったく正反対と思えるウクライナの対応はどう見ればよいのか。ゼレンスキー大統領は、これがロシアによるNATO加盟国への攻撃だとし、行動せねばならないと呼びかけたが、この「行動」とは、集団防衛行動を意味しているのは疑いない。つまり、ロシアに対する武力行使を含む行動をNATOにけしかけている構図になっている。

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