「ミサイル着弾」欧米冷静でも消えない戦争リスク 局地的紛争か、世界を巻き込むのかの境界線

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ポーランドのドゥダ大統領でさえ、正確な情報は確認されていないとの留保をつけているにもかかわらず、ゼレンスキー大統領がこのような発言をするのは、過度に挑発的だと言わざるを得ない。しかも、実際にはこのミサイルがウクライナ軍により発射されたものだとすれば、失言ですまされるものではないだろう。

問題は、ポーランド領にウクライナのミサイルが着弾したことにあるのではなく、ゼレンスキー大統領がこうした挑発的な発言をしたことにある。ウクライナのエネルギーインフラがロシアの爆撃にさらされていることを考えれば、ゼレンスキー大統領が神経過敏、感情的になるのは理解できなくはないが、第3次世界大戦の引き金となり得ることを軽々に発言するのは問題であろう。ゼレンスキー政権の信頼を損なうものとなってしまった。

ウクライナ紛争は局地的紛争か、世界を巻き込むのか

こうしたことの背景には、大きな認識上の違いが見え隠れする。ウクライナで起こっていることは局地的な紛争に過ぎないのか、それとも全世界を巻き込む国際秩序に関わる問題なのかということだ。結論から言うと、どちらでもあるというのが筆者の考えだ。

ウクライナ、そしてアメリカなどは、ロシアとの戦争は自由を守る闘いだとの主張を展開しており、自由民主主義の理念を守るための正義の戦いであるかのように喧伝している。自由民主主義を奉じるものは、ウクライナのために戦うべきだというわけだ。

しかし、十字軍的な理想に基づく行動は、国際の平和と安定に資するところ多くない。結果として破壊的なものになることが少なくないのである。アメリカは、日本に原爆を2度にわたり投下したことを、戦争の終結を早め、結果的に多くの人の命を救ったとして正当化している。

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