「ミサイル着弾」欧米冷静でも消えない戦争リスク 局地的紛争か、世界を巻き込むのかの境界線

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また、岸田文雄首相は、「ウクライナ侵攻は国際社会全体の根幹を揺るがす、法の支配に基づく国際秩序への挑戦だ」と繰り返しており、この立場に立てば、ウクライナの紛争は国際秩序、すなわちすべての国に関わる問題だということになる。

もし、これが国際秩序に関する問題であるのであれば、なぜロシアが侵攻したのか、なぜそれを止められなかったのか、国連はなぜ機能しないのかということこそが真の問題である。現在の体制が国際秩序を維持するために機能していないのであれば、国際秩序への挑戦だと憤っていても仕方がない。早急にウクライナ紛争の停戦を進め、実効性のある国際秩序を検討するべきではないのだろうか。

今必要なのは早期の停戦

一方で、ロシアはあくまでも自国の安全保障上の脅威を排除するための自衛行動と位置付けており、また、ドンバス地域を独立国として承認することで集団防衛に基づく行動であるとの立場である。

この立場に立てば、ウクライナ紛争は地域の安全保障に関する事柄であり、理念や国際社会全体の問題にはならない。あくまでも、紛争当事者の国益を比較衡量した現実的な解決策が求められる必要がある。

今回の事態は、本質的に局地的な紛争であるウクライナ紛争が、結果的に好戦的になっているウクライナ政府に引きずられてNATO対ロシアの戦争にまでエスカレートする危険性があることを明らかにした。

その意味でも早期の停戦が必要である。トルコは一貫して停戦の仲介に動いているが、アメリカも停戦に向けて動き出した気配がある。ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領とは交渉しないと宣言してしまっているが、そんなことを言っても現実的ではないことは明らかである。もはやこの危険な事態をいつまでも継続させておくことはできない。

亀山 陽司 著述家、元外交官

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かめやま ようじ / Yoji Kameyama

1980年生まれ。2004年、東京大学教養学部基礎科学科卒業。2006年、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修了。外務省入省後ロシア課に勤務し、ユジノサハリンスク総領事館(2009~2011年)、在ロシア日本大使館(2011~2014年)、ロシア課(2014~2017年)など、約10年間ロシア外交に携わる。2020年に退職し、現在は森林業のかたわら執筆活動に従事する。北海道在住。近著に『地政学と歴史で読み解くロシアの行動原理』(PHP新書)、『ロシアの眼から見た日本』(NHK出版新書)

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