オルバーン派は、影響力のある独立系メディアの経営権を掌握する動きも同時に進めており、選挙が定期的に行われていると言うことはできても公平な選挙が行われているとは言えない状況である。また、EU基金の不正利用や利益相反といった組織的な汚職疑惑が多いにもかかわらず、起訴率はほかのEU諸国と比べて低い水準にとどまっており、オルバーン首相とその周辺による公的資金の私物化が進められていると言える。
ポーランドも、政府にとって都合の悪い裁判官に対して定年引き下げや懲罰制度などを通じた介入を試みており、法の支配と司法の独立性が脅かされつつある。
EU内の現実を目にして、期待は失望に
民主主義と法の支配はともにEU憲法条約の第2条においてEUの基本的な価値と記されている。EU加盟の際には「コペンハーゲン基準」をクリアする必要があり、その条件の中には民主主義や法の支配も含まれているため、ポーランドやハンガリーでも導入が進められた。しかし、加盟後はそうしたテコが使えず、代わりにEU憲法第7条を根拠としたEU基金の停止を新たなテコとして両国の状況改善を求めている。
それにもかかわらず、両国はEUの基本的な価値の書き換えに向けた試みを続けている。
EU加盟当初、ポーランドとハンガリーはEUのメンバーとなることで西欧諸国や中欧のオーストリアと同レベルの豊かさを享受できると期待していた。そうした期待は厳しい市場競争や経済格差というEU内の現実を目の当たりにして、EUへの失望に変わってしまった。
この失望は両国の保守派の間で、冷戦終結以後に推し進めてきた民主主義や法の支配の確立といった取り組みへの反発をもたらした。さらには、両国はEUからの政治的な抑圧を受けており自律的な意思決定が妨げられているという、ドイツをはじめとした欧州の大国およびEUに対する不満も増大させた。
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