斎藤幸平が「あつ森」で体験した平等・公正社会の幻 ほのぼの無人島生活が全体主義的な快楽に

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斎藤幸平
斎藤幸平氏が「あつまれ どうぶつの森」を遊んで感じたこととは?(写真:KADOKAWA提供)
資本主義の下、現代人が無限の経済成長を追求したせいで、環境危機を引き起こし、地球を人間が住めない場所にしつつあると指摘するのが、経済思想家で東京大学大学院准教授の斎藤幸平氏です。その斎藤氏がコロナ禍でNintendo Switch向けゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」を遊んで、見えてきたことを解説します。
※本稿は斎藤氏の新著『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』を一部抜粋・再構成したものです。

2020年の夏のイベントは新型コロナウイルスショックで軒並み中止になってしまった。本当はコロナ禍で苦しむ音楽業界についてフジロックを取材したかったのに……。

そんな中、任天堂の営業益が「12年ぶり過去最高」という今の日本では珍しい景気の良いニュースを耳にした。ゲーム機「ニンテンドースイッチ」(以下、スイッチ)や専用ソフト「あつまれ どうぶつの森」(以下、あつ森)が、外出自粛による巣ごもり需要で大ヒットしたからという。

あつ森は、プレーヤーが無人島に移住し、虫や魚を捕ったり、島のインフラを整備したりしながら自分好みの街を作るという内容らしい。コロナ禍でなかなか外にも出られないが、子どもたちと一緒にプレーして夏の思い出を作り、家族の評判もアップ……悪くない。

実店舗に走ったら「入荷未定」の張り紙だらけ

ゲームなんて中学時代にやった「ファイナルファンタジーX」以来、約20年ぶり。早速スイッチを購入しようと実店舗に走ったが、私の目論みはまったくもって甘かった。どこも「入荷未定」の張り紙だらけなのだ。インターネット上では、いわゆる「転売屋」が定価を大幅に上回る価格で売っている。新型コロナの世界的大流行の影響による物流の混乱で、スイッチの生産が遅れているのだという。

時間がもったいないので、定価より高いプレ値で買おうかと迷ったが、やはり転売屋は許せない。必死でネットで調べると、抽選とかいろいろあるなかで、火曜日の朝10時、スイッチがオンライン通販サイトのAmazonで入荷する可能性が高いらしい。

書店を愛する身として、Amazonは嫌いだが、原稿を落とすわけにはいかない。かつてスニーカーを集めていた時の、ネット販売競争で養った無駄なスキルを活かし、なんとか定価でゲットすることができた。

ようやく始めることができたあつ森生活はちょっと感慨深い。その第一印象はとても平和なゲームというものであった。無人島の暮らしは、移住を手配してくれた不動産会社の社長たぬきちとその部下2人に加え、一緒に移住してきた2人との計6人で始まる。

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