ひとり広報を迎えた「宮崎県の田舎町」に起きた事 月10本のプレスリリースを出し続けた結果…

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これらは私だけのアイデアではなく、財団のメンバーから出たアイデアを形にしたものです。いずれも規模としてはさほど大掛かりなものとはいえませんが、大事なのは規模感ではなく、その企画を通して何を伝えたいのか、何を起こしたいのか、という想いの部分だと思っています。

それがただの情報に価値を与え、ニュースバリューとなるのです。

周囲の意識変えた「リリースの量産」

リリースを量産することで、数カ月前まで「広報」の意味すらわからなかったチームに変化が起きました。互いにアイデアを出し合い、「これはリリースを出せそうですか?」とメンバー同士が議論し合えるまでになったのです。

最初は1本のプレスリリースを出すのもひと苦労でしたが、ゼロからアイデアを形にして企画にし、プレスリリースによってていねいに情報発信したおかげで、着実に町や財団の認知を広げていくことができました。

このような活発な活動がほかの自治体の目に留まったようで、各地から財団への視察も絶えませんでした。地元の公務員が設立した地域商社「こゆ財団」の活動そのものが、地域活性のプロフェッショナルとして、1年後には新聞の1面を飾るまでになりました。

はじめはこちらから情報提供して取材に来ていただいた地元のテレビ局や新聞社も、露出の実績が積み上がってくると、メディア側から「こんな情報ないですか?」「これを取材させてもらえませんか?」と連絡をくれるようになりました。

さらには東京のビジネスシーンをリードするような方々や、地域コンテンツを扱う雑誌やウェブメディアの編集長、ジャーナリストの方など、財団幹部のリレーションを通じてさまざまな方に視察に来ていただきました。

このようにプレスリリースは、ひとり広報にとって大きな力となってくれます。PR TIMESで「こゆ財団」を検索すると、その軌跡がしっかりと残っています。

月10本のプレスリリース配信を目指して始めた広報活動は、2018年10月、ようやくその目標を達成することができました。単純計算で、3日に1本出していることになります。

なぜ、私たちがこれだけ「数」にこだわったかというと、それは「情報接触回数」を増やすことで町を認知してもらいたかったからです。

情報が世に出ることで、企業の活動が可視化されます。私は職業柄、企業サイトを見るとかならずニュース欄の更新日付を見てしまいます。数カ月や半年くらい更新されていないと、「ニュースのない会社なのか、更新作業を怠っているのか、リソースが足りていないのか」と、つい想像してしまいます。

それだけで判断するのは大雑把といえるかもしれませんが、アクティブでポジティブな企業イメージづくりに、プレスリリースの配信本数が一役買えるというのは、一理あると思います。

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