「NISA恒久化」暗雲、非課税期間の延長は無理筋か 「口座開設期間」延長でお茶を濁す案も浮上

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国民の期待が大きかったNISA恒久化プランには難題がたちはだかる(写真:CORA/PIXTA)

政府が年末の公表を予定している資産所得倍増プラン。支持率低迷に苦しむ岸田政権が現状打破のきっかけとしたかったところだが、プランの目玉施策である「NISA(少額投資非課税制度)恒久化」の見通しが怪しくなってきた。官邸と金融庁、そして金融業界の間で調整が難航しているというのだ。

システム改修が障壁に

投資で得た収益が条件つきで非課税となるNISA制度は、国が掲げる「貯蓄から投資へ」の流れを勢いづける目的で2014年にスタート。総口座数は2022年3月時点で1600万を超える。ただし現行制度は時限措置つき、つまり「期間限定キャンペーン」のようなもので、若者が老後に向けた資産形成に向けて安心して活用できる制度設計とは言いがたい。

時限措置を撤廃し、NISA制度を恒久化する機運が一気に高まったきっかけは、5月に外遊先ロンドンでの講演で飛び出した岸田首相の発言だった。ここで首相はNISA制度の「抜本的拡充」を進めると明言。制度を所管する金融庁も8月、NISAの恒久化や非課税枠拡大を盛り込んだ税制改正要望を提出した。9月には、首相がニューヨーク証券取引所での講演でNISA制度拡充に改めて言及し、「恒久化が必須」と発言した。

表面上の経緯だけを振り返れば、NISA恒久化はほぼ既定路線になったかのようにも思えるが、水面下では重大な問題が浮上している。政府は当初、2024年1月の新制度移行を目指していたものの、金融機関側のシステム改修に想定以上の時間が掛かることが判明したのだ。

みずほ銀行のシステム障害でよく知られたように、金融機関のシステム改修には莫大なコストと不具合発生のリスクが伴う。口座管理システムを含めた大規模改修となると、「どれほど急いでも1年以内には終わらない」(有力証券幹部)。

また、手数料水準の低い投資信託に売買が偏りがちなNISA制度は証券会社や銀行にとって、ほとんど儲けにつながらないとされる。業界側からは「政権としては実績作りを急ぎたいのかもしれないが、見返りが期待できないシステム改修のために、事業者がコストとリスクを引き受けなければいけない意味がわからない」(地銀幹部)と不満も漏れ聞こえる。

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