「NISA恒久化」暗雲、非課税期間の延長は無理筋か 「口座開設期間」延長でお茶を濁す案も浮上
監督当局の立場で金融機関と意見交換をする機会が多い金融庁内では、システム改修に相当の時間が掛かることは常識だ。なぜ政府は、あらかじめ問題を予想できなかったのか。
その一因が、官邸と金融庁との「微妙な距離感」にある。政府側でNISA拡充を担当している木原誠二官房副長官は旧大蔵省出身で、官邸メンバー内では最も金融分野に詳しい。だが、この出自がかえって連携の妨げになっているようだ。
「現在の金融庁幹部連は大蔵省時代の先輩に当たり、後輩の木原氏が命令を下す逆転現象が起きて関係がギクシャクしている。本来は緊密に連絡を取るべきだが互いに遠慮し合い、木原氏と十分に腹を割って意見交換できる官僚が当局側に存在しない」(中堅職員)という。
5月に首相がロンドンで行った講演でも、政官で擦り合わせが充分に行われないまま本番に突入した結果、あるアクシデントが発生した。首相は日本の家計金融資産が1.4倍になるまでにかかった期間について、誤って「10年」(実際は20年)と述べたのだ。役人サイドからは「事前にレクの時間を十分もらっていれば、こんな初歩的ミスは起こり得ないのに」(別の職員)とため息が漏れた。
金融庁内ではNISA恒久化について、2024年1月の制度移行という政府側の要求を満たしつつ、NY講演との整合性を図る「最低ライン」で行く案が浮上している。「非課税期間」ではなく、「口座開設期間」を無期限に延長するというのだ。
自然に考えれば、「恒久化」とは投資の収益が非課税になる期間の無期限化を意味する。非課税期間の時限措置を据え置かれれば、新たに口座を開設できる期間だけが延長されても、投資上限額が多少拡大したところで1人1人の利用者にとってメリットは少ない。政府として「非課税期間の恒久化」を明言していたわけでないとしても、次善の策に落ち着けば国民から「騙された」と批判が起こりかねない。
FP権限拡大論が浮上
恒久化に向けた調整が暗礁に乗り上げるつつある中、NISA拡充にかわるプランの目玉として、ある別計画の準備が急ピッチで進められている。家計を総合的にアドバイスするファイナンシャルプランナー(FP)資格を持つ人材を活用した、国民の金融リテラシー向上策だ。
現状、FP資格の保有者が投資についてアドバイスをする場合、(証券外務員や保険募集人などと兼業している場合を除いて)具体的な商品名を提案してはいけないなど実務的な制約が多い。商品名に踏み込んで助言をするためには金融商品取引法に基づいて投資助言業への登録が必要だが、個人事務所など小規模事業者にとっては参入のハードルが高い。
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