ドラマ「silent」第5話で見えた圧倒的支持の理由 物語を徹底解説、今からでも間に合う話題作の見方
紬は「ハンバーグを焼くため」を口実にすることでようやく電話を切ることができ、湊斗はベッドで1人寂しく横になりながら電話を置いてそのまま眠ってしまい、朝になりました。
目覚めると隣に紬が寝ていて、復縁したと思わせるような会話が続き、多くの視聴者は「あれっ?」と思ったでしょう。さらに昨晩の電話をなぞるように、100均のヘアピンをつける紬。湊斗が「かわいい」と言って笑うと、サッと画面が切り替わり、昨晩に戻っていて紬はハンバーグを焼いていました。
あるモチーフをさまざまな角度から
紬は両親のハンバーグにまつわるエピソードを引き合いに出しつつ、「好きな人の言う『かわいい』は強いから。威力が。中学生のときに買ったヘアピンも捨てられなくなる」と弟・光に語りかけたことで、その前のシーンが交際当初の回想であることがわかったのです。紬が「お腹へった」とハンバーグを食べようとする一方で、目覚めた湊斗も「お腹へった」と動き出し、ゴミ箱にはヘアピンが捨てられていました。
「ハンバーグとヘアピンという2つのモチーフだけで、これだけ多方面から紬と湊斗の感情を描ける」ということが、いかに優秀な脚本であるかがわかるのではないでしょうか(そのほかにも、「ポニーテール」というモチーフも繰り返されました)。
ラストシーンは、ようやく想に会う気持ちになれた紬に、彼は手話でもスマホでもなく、ノートに手書きした文字を見せていきました。「2人が別れたの、俺のせいだと思って 再会しなければよかったと思った」「でも、青羽が手話で話してくれることも 湊斗たちとまたサッカーできたことも うれしかった」「青羽と湊斗には悪いけど やっぱり再会できてよかったと思う」「青羽が俺のことちゃんと見てくれるなら ちゃんと言葉にしたい」などと書かれた直筆の文字は実感であふれ、想が心を開いたことで2人の物語が再びはじまることを予感させたのです。
想と食事をすることになった紬がいったん「何でもいい」と言ったものの、「やっぱり何でもよくない。ハンバーグ以外にして」と言い直すラストカットで終了しました。ここでもハンバーグでオチをつけたほか、最後の10数秒は紬が複雑な表情を見せるのみでセリフはなし。やはり「余白や間を作って視聴者に思いをはせさせる」という脚本・演出は徹底されていたのです。
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