ドラマ「silent」第5話で見えた圧倒的支持の理由 物語を徹底解説、今からでも間に合う話題作の見方
立役者は村瀬健プロデューサー
「silent」のヒットにおける最大の立役者は、村瀬健プロデューサーで間違いないでしょう。
29歳の新人脚本家・生方美久さんと、31歳でプライムタイム初演出の風間太樹監督を抜てきして、伸び伸びと才能を発揮させていること。このような抜てきは、脚本家・演出家の高齢化が叫ばれるドラマ業界では画期的なことです。
また、仕事やコメディのパート、箸休めのようなシーン、大きな出来事や特別なキャラなどに頼らず、「恋愛や音」というテーマに絞ってひたすら掘り下げていること。たとえば、想や湊斗の仕事に関する描写がほとんどありませんし、紬もごくわずかにとどまっていることからもそれがわかるでしょう。さらに、近年の傾向である視聴率狙いの展開重視ではなく、感情重視の作品にしていることも特筆すべきポイントです。
もう1つ象徴的なのは、実在の場所、曲、アプリなどをそのまま使ってリアリティと臨場感を生んでいること。たとえば第5話でも紬がスーパーで買い物をする20秒程度のシーンがありましたが、これは「失恋したときの孤独感や寂しさを感じさせる」という意味で重要でした。このようなロケを惜しまない姿勢があるからこそ、視聴者の没入感が高く、ロケ地めぐりをする人々が多いのでしょう。
これらプロデュースの方向性が差別化されているほか、一切のブレがないため、視聴者は「このドラマはちょっと違う」という印象を受けるのです。
当作の恋愛模様には、「本当に傷つくくらいなら、その前に自分から離れたほうがいい」「恋は大事だけど、友人も同じかそれ以上に大事」などと考える現在の若者像を感じさせるものがあります。これまでの恋愛ドラマは、奪い合い、嫉妬、あざとさ、ずるさなどを描くものが多かっただけに、これは29歳の若い新人脚本家を起用したメリットなのかもしれません。
その一方で昭和世代の中高年にもウケているのは、前述したように、恋愛に絞った作品だから。振り返ると1980年代~1990年代前半は恋愛に絞って仕事のシーンなどをほとんど描かない恋愛ドラマが大半を占めていました。当時は恋愛のプライオリティが高かっただけに、「silent」のように恋模様に集中し、揺れ動く恋心をしっかり描いた作品は、中高年層にとっては親しみのあるものなのです。
湊斗が魅力的な人物だけに、「これで紬と湊斗の関係は本当に終わり?」「嫌だ。納得がいかない」という人もいるでしょう。しかし、制作サイドはそんな視聴者感情を折り込み済みで、「今後の物語で想の魅力を見せていける」という自信の表れにも見えます。もちろん湊斗との関係も再び動き出すかもしれないですし、最終話の結末が紬と想のハッピーエンドかはわかりません。
ここまで視聴者を驚かせ、心を動かしてきた村瀬健プロデューサー、生方美久さん、風間太樹監督がどんな結末を用意しているのか。原作のないオリジナルであるだけに、最後までネット上をにぎわせてくれるでしょう。
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