総合経済対策の財源は、その大半を国債増発に頼らざるをえない。
したがって、それを予想して、長期金利が上昇する(国債価格が下落する)。
ところが、日銀は、債券の利回りと償還期間との相関性を示したイールドカーブについて長期金利と短期金利の誘導目標を操作する「イールドカーブ・コントロール」(YCC)政策によって、長期金利を抑えている。つまり、国債価格が本来は下落するはずなのに、それを買い支える政策を行っている。したがって、長期国債の価格が、本来あるべき水準に比べて、高すぎる水準になっている。
日銀は、買いオペを行って、0.25%という低い金利で国債を買う(高い価格で買う)。だから、日銀に国債を売る人はいる。
しかし、市場では、その価格で売買はできない。価格が高すぎて、買い手がいないからだ。
つまり、日銀との間の固定価格での取引のみが行われ、市場では、国債が取引されない。
この意味で、日本の国債市場は、機能しなくなってしまった。
抑圧されて不自然な形になったイールドカーブ
日本銀行は、2016年9月に「イールドカーブ・コントロール」政策を導入した。これは、政策金利だけでなく、長期金利も直接の統制下に置く方式だ。
具体的には、10年国債の金利に目標値を設定し、国債の買いオペによって、長期金利をその上下の一定範囲内に抑えようとするものだ。
長期金利の直接コントロールは、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が1942年から1951年に実施したことがあるが、その後は、どの国の中央銀行も採用したことがない政策だ。
現在のイールドカーブの形状を見ると、図表1のように、10年金利が低く抑えられ、それより期間の長い金利が急に高くなるという、不自然な形状になっている(なお、日本のイールドカーブは、異次元金融緩和導入前も、10年までは比較的平坦だが、それ以降で傾きが急になる形になっていた。ただし、現在ほど不自然な折れ曲がりではなかった)。
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これは、明らかに市場の実勢を表していない。
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