意外と知らない「精子の状態」調べる検査の実態 不妊のおおよそ5割は男性側にも原因がある
精液検査は1台の機器による検査かマクラーチャンバー(医師の目視)による検査のどちらかで行う医療機関が多いようです。
私の検査では、LensHooke、SQA - Vという2台の専用の機器とマクラーチャンバーを組み合わせた測定を行います。検査機器はメーカーによって計測値に差が生まれるため、複数台使用することで誤差を抑えることができます。
また、機械では計測しきれない精液の状態を医師の目で確認することにより、より正しい精液の状態を患者さんにお伝えすることができるのです。
さらに、新しい検査項目である、精子DNA断片化率測定(DNAが損傷している精子の割合や核が未熟な精子の割合を測定)と精液酸化ストレス検査(精液中の酸化ストレスへの抵抗力を測定)によって、より精液の精緻な状態を把握することが可能となりました。
WHOは精液検査法のマニュアルを、2021年、11年ぶりに改訂しています。そこに初めて精子DNAの断片化率や、精液酸化ストレスの検査が記載されました。これは精子の形、動き、数だけではなく、中身もチェックしたほうがよいということです。精子のDNA断片化率が悪い精子は、人工授精で子宮内に戻しても着床率が低いことがわかっています。体外受精をしても受精卵の発育に時間を要するといった報告があります。
これまで精子の形、動き、数に問題がなくても受精できなかった男性は、原因不明で悩んでいました。しかし、精子の中身を調べることで、精子DNAが損傷していると原因が判明し、治療に進める機会も増えました。
精液の状態は日によって違う。1回の検査で一喜一憂しない
ブライダルチェックで精液の所見がよくないという検査結果が出ると、「自分は子どもができない体だったのか……」とショックを受ける方も少なくありません。
しかし精液の状態は日によって違います。精子の数や運動率、形は、疲労や睡眠不足といった日々の生活の影響を受けるので、最初の検査では基準値を下回っていても、再検査をすると基準値を上回ることがあります。WHOのデータでは、精子数が1億8000万/㎖あった人が、別のときの検査でほぼ0になっていることもあり、1回の精液検査の結果が悪かったからといって、悲観的になる必要はありません。
一方、精液の所見が基準値を上回っていても、EDや射精障害などで性交が難しい場合は不妊となるので、精液だけで判断することはできません。1回の検査で一喜一憂せず、検査結果が悪かった場合は、医師と相談して、再検査をするなど、次のステップへ進んでください。早い段階で問題があることに気がつけば、治療も早くでき、妊娠の可能性も高まります。
最近は「精子検査キット」がネットで販売されており、自宅にいながら精子の検査が気軽にできます。ただし、精子数が多くても質が悪い可能性はあるので、検査で基準値以上でも、安心というわけではありません。誤判定で不妊治療が遅れることがないよう、子どもを望む方は、医師による正確な診療をおすすめします。
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