介護報酬カットで「職員の処遇悪化」の懸念 職員労組が「介護労働110番」を実施

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ただ、介護現場で職員の処遇改善が進むかは未知数だ。

東京介護福祉労働組合ではむしろ「キャリアパスを定められるのは大規模な事業所に限られる。報酬全体が削減される中で、加算取得が進むとは考えられない。介護現場では人手不足がさらに深刻化し、賃金引き下げや残業時間の増加など、労働条件はむしろ悪化するのではないか」(田原聖子副委員長)と見ている。

 過重労働が職員を追い詰めている

厚労省の調べによれば、介護施設職員などによる高齢者虐待の件数が年々増えている。「相談・通報件数」は2006年度の273件から2014年度には962件に達した。前出の田原氏は、「介護現場が過重労働などによって疲弊し、職員が追い詰められている証拠ではないか」と分析している。

「介護労働110番」は2007年6 月以来の約8年ぶりの実施となる。当時は大手介護事業者のコムスンが介護報酬の不正請求で行政処分を受けた直後に実施したこともあり、同社社員からの雇用不安を訴える相談が最も多かった。

今回の電話相談は、職員が抱える問題の解決を第一義的な目標としつつ、労働条件の実態把握を通じて、政策提言につなげるという意味も持つ。(電話番号は03-5395-5255)

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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