巷で話題、「公的年金をめぐる2つの提案」の背景 2024年財政検証は出生数減少で一段と厳しく

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もう1つの話題である「国民年金保険料の納付期間の5年延長」は、現行の受給開始年齢は65歳なのに、国民年金の保険料納付は60歳になるまでだから、保険料納付を受給開始直前まで5年延ばすことで、受給開始後の給付を増やそうという案である。

この案も、実はすでに2019年の財政検証の際にも出されており、オプション試算としてその影響が分析されている。確かに、これによって、厚生年金が国民年金を救済する形ではない方法で、基礎年金の給付水準を維持することができる。

現に、厚生年金加入者は、60歳を超えて引き続き勤務するならば、要件を満たす限り70歳になるまで保険料を払い続ける仕組みとなっている。だから、今回の案は、国民年金加入者もそれに倣って保険料を納付し続けるものとみることができる。巷間、無理やり保険料を払わせられるといった報道も見られるが、そのように解することは妥当でない。

むしろ、厚生年金加入者は60歳を超えて保険料を払い続けているのに、国民年金加入者は60歳を超えたら保険料を払わない、というのでは、国民年金加入者の年金給付は少なくなっても致し方ない。

ただでさえ、基礎年金の給付が目減りすることが懸念されているのだから、国民年金加入者も、厚生年金加入者と同様にせめて65歳になるまでは保険料を払えば、老後の年金給付の水準を上げることができる。

2分の1を負担する税財源の確保が課題に

しかし、国民年金保険料の納付期間の5年延長でも、厚生年金積立金による国民年金の負担軽減でも、越えなければならない難関がある。

それは、基礎年金給付の財源は2分の1が税財源(国庫負担)となっていることから、その税財源をどう確保するかである。率直に言えば、基礎年金給付の水準を目減りさせないようにするためには追加的な増税が必要であり、それに国民が応じるかどうかという問題だ。

国民年金の保険料納付期間を5年延ばすということは、これに合わせて基礎年金給付に必要な税財源を5年分別途確保しなければならないということを意味する。国民年金加入者に5年多く保険料を納付してもらうとしても、それは給付に必要な財源の半分にとどまる。ましてや、その間に、保険料の減免が適用されれば、減免された分までも税財源で穴埋めしなければならない。

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