英国史上初「インド系首相」誕生の知られざる背景 金融業界出身のエリート、リシ・スナク氏が就任

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イギリスのスナク新首相
スナク氏は金融業界出身のエリート(写真:ブルームバーグ)

イギリスといえば、つい最近、エリザベス女王崩御による国葬とチャールズ新国王が受け継ぐ白人のロイヤルファミリーが世界から注目を集めた。とくに女王の葬儀は威厳に満ち、政治的権限はないにしろ、君主の存在感を世界に示した。

ところが、その女王が生前最後の公務として任命したリズ・トラス首相が財政政策でつまずいて辞任。後任となったのが、イギリスでは初の非白人の首相となった、インド系のリシ・スナク氏(42)だ。そこで、かつてはイギリスの植民地だったインド系の首相が誕生した背景を見ていきたい。

イギリス社会への影響力を増しているインド系住民

実は、イギリス最大の移民コミュニティーを形成するのはインド系だ。インドは1947年にイギリスから独立したが、イギリスとインドは人的交流を続け、スナク氏のようにイギリスで高等教育を受け、高収入を得る優秀なインド系イギリス人のコミュニティーが短期間で形成された。

インド系住民のイギリスの総人口に占める割合は2.5%強だが、それだけで社会的影響ははかれない。例えば、アメリカ国内のユダヤ系住民の総人口に占める割合は1.7%だが、政治、経済に対する影響力ははかりしれない。インド系住民のイギリス社会に与える影響は今、アメリカのユダヤ系コミュニティー同様に、増大している。

実際、2019年のイギリスの下院選挙では、15人のインド系の下院議員(MP)が生まれた。さらにイギリスのトップ100の起業家のうち9人、イギリスの最も裕福な居住者20人のうち3人がインド系、多くのインドの実業家もイギリスに第2の拠点を所有し、子どもはイギリスの高等教育を受けている。ジョンソン政権では4つの重要閣僚ポスト(首相、財務相、外相、内相)の2つをインド系が占めていた。その1人がスナク氏だった。

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