ごみ収集自体は同じでも、事業系廃棄物の収集は、地方自治体による一般廃棄物(家庭ごみ収集)とはまったく違う業務形態となっている。
家庭ごみ収集は、自治体の区域内という限定的なエリアにおいて、一定の間隔で設置された集積所に排出されるごみを収集して回る。多少は離れているケースもあるが、面的にエリアがカバーされており、非常に効率良くごみを収集できる。
一方で事業系廃棄物の収集は、その顧客先を個々に訪問して収集して回る。契約している事業者が、大方の収集先とは離れたいわば「飛び地」にあれば、たとえそれが1つの少量のごみ袋でも、顧客先まで清掃車を走らせて収集に行かなければならない。つまり、広域に点在する排出ごみを、線で結ぶように清掃車を走行させて取りに回っているのだ。
コンパクトにまとめられた地方自治体の収集形態とは違い、大型の商業施設を除いては一度に多くのごみを同時に収集できないため、収集効率はかなり低くなる。
しかも、事業系一廃と事業系産廃に分けて収集するため2台の清掃車が必要となる。さらに、収集に行っても廃棄物が出されておらず、空振りに終わる時もある。
このように事業系廃棄物の収集はかなり非効率な業務形態となるため、大概は割り当てられる人員は1人となる。収集スタッフが1人で清掃車に乗務し、清掃車を運転して収集先に向かい、到着すれば排出されるごみを積み込むという流れで収集が行われている。車庫と収集地区の距離にもよるが、1日の走行距離が100~150kmにも及ぶ時もある。1日作業を続けてやっと清掃車のタンクがいっぱいになる。
孤独で過酷な事業系廃棄物の収集
筆者は東京23区の事業系廃棄物を収集する白井エコセンターのご厚意により、日の出前から始まる昼間の収集に2日間、0時前に出勤する夜通しの収集に2日間、合計4日間も清掃車に同乗させてもらい、収集実態を学んだ。
区の収集とはまったく異なる現場の状況に驚いたのだが、その中でも衝撃的だったのが、スタッフの方々は独りで過酷な労働を黙々とこなしている点であった。
事業系廃棄物の収集は1人乗務であるため、頼れるのは自分のみとなる。スタッフは自らハンドルを握り、車を停めると事業者と取り決めた集積所へと足早に向かう。ごみ袋を積み込むと記録を取り、また運転席でハンドルを握り次の収集場所へと急ぐ。それを延々と繰り返していく。
マイペースで仕事はできるものの、こなさなければならない業務量は多く、そこから来るプレッシャーの中で業務を遂行している。よって、このような激務でもあるため、事業系廃棄物の収集業界は慢性的な人手不足であり、ギリギリの体制で毎日の廃棄物収集が行われている。
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