習近平の中国、「思想」が権力を正当化し維持する 「指導」と「監視」で14億人が無言になる国家
元オーストラリア首相のケビン・ラッド氏は、英国の新聞Financial Timesで習氏の演説を「過去 40 年間に見られたものよりも、トーンや内容がイデオロギー的だ。20世紀半ばまでに中国を世界の大国にするという習主席の野望を推進するマルクス・レーニン主義の世界観を強調している」と評している。
米ソ冷戦のイデオロギーの時代はすでに過去のものとなり、日本や欧米の主要国の政治は目の前の課題にいかに効果的に対処するかという現実主義、あるいは国民の支持を得るためのポピュリズムに走っているが、中国は正反対を向いているようだ。
すべての活動において共産党の「指導」を堅持
その中核をなす「新時代の中国の特色ある社会主義」とはどういう内容なのか。
昨年11月に公表された「歴史決議」には、「中国の特色ある社会主義は、現代中国のマルクス主義、21世紀のマルクス主義であり、中華文化と中国精神の時代的成果であり、マルクス主義の新たな飛躍を実現している」と記されている。源流はマルクス主義であると権威付けしているが、そのまま適用するのではなく中国流にアレンジしている。それが「中国の特色」を指しているのであろう。
では何が中国流なのか、今回の演説でもいくつか具体的に言及している。その中で最も重要なポイントは、あらゆる面での「共産党の指導の堅持」だ。
前回2017年の党大会の演説で習近平氏は「党・政・軍・民・学の各方面、東・西・南・北・中の全国各地について党はすべての活動を指導する」という表現で、国中のありとあらゆる分野を党がすべて「指導」するとした。中国国内に共産党の目の届かないところはないという意味である。この強烈な表現に多くの専門家が驚いた。
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