おおた:世にある中学受験の記事とか本だと、いかに子どもを変えるかっていうベクトルが多いわけじゃないですか。でも私たちが描く作品に共通するのは、親の側が子どもに対する感受性とか、あるいは子どもの人生に対する尊重みたいなものを高めていこうというメッセージですよね。
そこには当然ながら苦しみが伴う。今まで自分が当たり前だと思ってきたことを少しずつ手放していくっていうことなので。中学受験とは、それをせざるをえなくなる機会であって、そこにちゃんと正面から向き合うことができたら、親も人間として一皮むけるはずだと思います。
不合格があることに12歳を挑戦させる責任の大きさ
朝比奈:世の中に出回っている中学受験のエピソードは合格体験記ばっかり。『勇者たちの中学受験』は不合格体験記で、しかもここまで内面をさらしているものはなかなか読めません。たいていの人が、つらかったことは見なかったふりをしちゃうから、あらがいようもなくどんどん流れていった時間とかは、たぶん文字になってないと思うんですよね。
おおた:誰もが第1志望に受かっていないことしか書いてないっていう。
朝比奈:でも、そのぐらいの確率だと思っておいたほうがいいってことですよね。
おおた:そうですね。
朝比奈:もともとの第1志望があっても、成績が上がればそれより上を目指したくなるかもしれないし、周りからも促されるかもしれない。
おおた:確かに。
朝比奈:不合格があることに12歳を挑戦させる責任の大きさを、大人はもっと考えなきゃいけないと思います。
高瀬:しかも不合格だったときに「失敗」って親が言っちゃうこともあるし。「お前は悔しくないのか」って、あるじゃないですか。「悔しかったら、3年後にリベンジしてみろ」とか。
朝比奈:リベンジの話も出てきましたね。
高瀬:「なんなんだ? 悔しがって、リベンジを誓わなければいけないところまでセットか? ええ〜!?」って。こんなこと言うとたぶん、本気でそう思ってる方からは「にぶい」って言われちゃうのかもだけど……。
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