無料「灘受験ツアー」が子どもに与える怖い影響 中学受験「失敗」で「リベンジ」は是か非か

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朝比奈:例えば、おおたさんの本のエピソードⅡに描かれていた灘特待ツアーの話には、ほんとにいろいろ考えさせられました。灘中が進学先の候補であるなら必要なチャレンジですが、進学の予定がなく、「三冠(灘、開成、筑駒合格)」という勲章を得るために受験する場合、特待だから、無料だから、という前に、「三冠」を目指す受験がわが子にどのような影響を与えるか、本当に必要なことなのかなど、大人は冷静に判断する必要がありますね。

そもそも本命の前にわざわざ遠くまで行って難関校を挑戦するのは、子どもにとって心身ともに大きな負担。決めるのは各ご家庭だと思いますが、塾の期待や親の意向を子どもに感じさせないようにしなければ。

朝比奈あすか
朝比奈あすか(あさひな・あすか)/小説家。中学入試の問題文としても頻出。中学受験をテーマにした作品に『翼の翼』がある。(c)松蔭浩之

おおた:そうですね。

朝比奈:このことに限らず、周りの大人に何を望まれてるかって、子どもは察してますし、中学受験って、まだ心のやわらかい小学生のうちに、ぐわーっとすごい体験をさせて、それが彼らにどういう影響を与えてゆくかが、すぐにはわからない。こういうことって本当はもっと真剣に考えないといけないことだなと、おおたさんの本を拝読して改めて感じました。

中学受験をどういうスタンスでくぐり抜けるべきか

おおた:多分その辺の問題意識ってわれわれに共通しているところじゃないかと思います。今、中学受験という仕組みがあることは厳然たる事実で、その中を多くの親子が通過していかなければいけないんだけれども、そこには大きな歪みもある。どういうスタンスでそこをくぐり抜けるべきなのかと問題提起しているのが、私たちに共通する意識なのかなと感じています。

高瀬:そのメッセージがストレートに書けるのは、やっぱりノンフィクションならではの強みですよね。漫画ではそこは読者に読み取ってもらうしかなくて、すごく難しいなって感じることがあります。中学受験では最終的に思いどおりにならない人がすごく多い。思いどおりにならなかったときに、傷ついた子どもをどうやって癒やすのか。そこまでが中学受験ですよね。

『二月の勝者』(小学館)も、自分の思いどおりにならなかった子どもを許容する話として描いています。『翼の翼』もそこは同じですよね。みんなやっぱりその傷を癒やしながら、子どもっていう存在を、ありのままで受け取っていく。でもそのためには親が、自分の中の何かを変えなきゃいけないんですよね。そこに大きな苦しみがある。

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