世襲は「人材の壮大な無駄遣い」である経済的理由 良い悪いの感情論を超え、日本経済にマイナス
以上をまとめると、「同族経営・世襲には良い点も悪い点もある」「メリットを生かし、デメリットを抑えよう」という結論になります。
しかし、私はこの当たり障りない結論に同意できません。なぜなら、同族経営・世襲は、確実に「悪い」ことだからです。
同族経営・世襲とは、創業家出身者が能力に関係なく経営者という職務に就くということです。先述のN社の新社長のような逸材にとって中小企業経営者という職務は難易度が低いですし、無能な後継者にとっては難易度が高過ぎます。同族経営・世襲では、経営者の能力と職務の難易度がマッチしないケースが頻発します。
理想は、N社の新社長は大手企業で得意な開発の仕事を続け、無能な後継者は相応の地位にとどまり、相応の能力を持つ他の誰かが後継者になることでしょう。これが、最適な人的資源の配分、経済学でいうパレート最適です。
現在、数百万人の中小企業経営者が自分の能力にマッチしない経営者という仕事をしている可能性があります。そのあおりを受けて、数百万人の従業員が自分の能力よりも低い仕事をしているともいえます。これは、国家レベルでは、壮大な人材の無駄使いです。
政府はいま、少子化による労働力不足を受けて、転職を容易にして人的資源を最適配分するよう改革を急いでいます。その一方で、事業承継支援で人材の無駄遣いを促しているのは、矛盾した政策と言わざるを得ません。
政治家・経営学者は世襲を「良い」こと、国民は「悪い」ことと考えています。どちらが正しいのでしょうか。「良い点も悪い点もある」でお茶を濁すのではなく、しっかり議論を深めたいものです。
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