世襲は「人材の壮大な無駄遣い」である経済的理由 良い悪いの感情論を超え、日本経済にマイナス

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経営者に関して、一つ興味深い指摘がありました。関西の機械メーカーN社の工場長Kさんは、「世襲だからこそ優秀な経営者を起用できる」と主張します。

「2年前、前社長の長男が社長に就任しました。新社長は京都大学出身で、卒業後は大手メーカーに勤務し、開発部門のエースだったそうです。そういう超逸材が従業員数百名のわが社に来てくれるのは、世襲であればこそでしょう。われわれ従業員は『これでわが社も安泰』と胸をなでおろしています」

公私混同と情実人事が横行

一方、同族経営のデメリット。同族経営を「悪い」と回答した6人のうち5人が、無能な経営者の問題、とくに経営者の「公私混同」を厳しく糾弾していました。

「うちの社長は、会社の資産も資金も従業員も、すべて自分のものだと思い込んでいます。家族旅行の費用を会社から出させたり、自宅の用事に休日でも従業員を駆り出したり。私のような年配者は『そんなもんでしょ』という感じですが、若手は愛想を尽かしています」(食品)

「わが社の新社長は、まったく無能で、経験も浅く、まともな経営判断ができません。創業家の維持と自分の収入確保が経営の目的になっていて、従業員の幸福やお客様の満足なんて眼中にありません。どこかの国の指導者と同じです」(運輸)

こうした経営者の無能さと関連して「情実人事」が起こりやすいのも、同族経営の大きな問題点のようです。

「うちの社長は、自分の好き嫌いを優先し、情実人事を繰り返しています。同族関係者が早く昇格するのは我慢できますが、無能なイエスマンで自分の周りを固めているのは、大問題です。同族企業では社長の力が強すぎて、悪いことが正されず、ずっと悪いままです」(建設)

また、「やはり同族経営だと資金調達力やリスク耐久力がなく、思い切った投資ができません。従来の事業を守り続ける発展性のない経営で、社内では閉塞感が充満しています」(サービス)という指摘もありました。

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