世界の鉄道市場で商機狙う「新たな日本企業」たち 洗車、職員研修、場違い?の育児用品メーカーも

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信号大手の日本信号は、塚本英彦社長が自らブースに立ち、訪れた見学者の質問に対応していた。会場には同社がJR西日本などと開発中の「人型重機ロボット」のパネルが展示され来場者を驚かせる。「見る人はぎょっとしますよ。“なんだこりゃ”って」(塚本社長)。もっとも、来場者の関心が高いのは「SPARCS(スパークス)」という無線通信による列車制御システムだという。一般的には「CBTC」と呼ばれ、世界各国の関連メーカーが売り込みにしのぎを削る。「スパークスの強みはロバスト(頑健)性」と塚本社長は他社製品に対する優位性を強調する。

日本信号ブース
日本信号は社長が自らブースで見学者に対応した(記者撮影)

鉄道事業者では東京メトロが気を吐いた。従来の出展では自社の事業内容に関するパネル展示にとどまっていたが、今回は海外の鉄道事業者向けの研修プログラムを大きく紹介した。列車運行から保守・管理に至るまで、これから鉄道導入を予定する新興国では鉄道業務に関わる人材の育成が急務である。東京メトロはフィリピン運輸省の職員向けに研修を請け負うなどの実績があり、「新たな収益柱に育てたい」と同社の担当者が意気込む。

初出展、ベビー用品メーカーの狙いは?

鉄道業界の中では一見、場違いに思える会社もあった。ベビー用品メーカーのコンビウィズである。同社は東海道新幹線の車両の一部のトイレに設置されているおむつ替えシートやベビー専用チェアを製造する。海外では韓国の高速鉄道KTXの車両に同社のおむつ交換台が設置されている。「さらに海外で伸ばしたいと思い初参加した」(同社BCS海外事業部の菊井俊博主席)。2020年の出展を予定していただけに、今回ようやく念願がかなった。ただ、海外展開は簡単ではない。欧州では燃焼試験規格をはじめとする鉄道の技術規格が日本と違うからだ。「仕様決定や設計には苦労しているが、ぜひやり抜きたい」と菊井主席は話す。

初参加の企業はほかにもあった。鉄道車両や大型バスなどの洗浄を行う洗車機を製造する日本車輌洗滌機という会社だ。JR各社や私鉄各社に数多く納入し、「国内シェアは70%」と増田尚弘社長が胸を張る。列車の先頭形状はそれぞれ異なる形をしているため、機械でどうやって細部まできれいに汚れを取るかという点に独自のノウハウがあるという。エジプト、タイ、シンガポールなど海外での実績も多いが、「さらに幅広く展開したい」と今回の出展を決めた。

こうした企業の中から、将来の世界の鉄道ビジネスを牽引するような技術や製品が登場するかもしれないと考えると今からわくわくしてくる。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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