世界の鉄道市場で商機狙う「新たな日本企業」たち 洗車、職員研修、場違い?の育児用品メーカーも

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一方で、日立と並ぶ国内の雄、川崎重工業や電機品などに強みを持つ東芝の姿は会場になく、ブース内の新幹線シミュレーターが人気を集めたJR東日本をはじめJR東海、鉄道総合技術研究所といったJRグループ各社も出展を見送った。日本鉄道システム輸出組合が館全体を借り切り、フロア全体が日本企業のブースで占められる「ジャパンパビリオン」も今回は館の半分を借り切るにとどまり、残り半分はセミナー会場になっていた。これまでの日本勢の存在感の大きさと比べると、やや寂しいものがあった。

その反面、この機を利用して以前にも増して海外に売り込みをかける企業もある。その筆頭は三菱電機。2018年開催時はジャパンパビリオン内に大型ブースを構えていたが、今回はジャパンパビリオンを飛び出して、外国勢がひしめく別の館に単独で出展した。

三菱電機ブース
今回のイノトランスでは単独でブースを構えた三菱電機(記者撮影)

三菱電機ヨーロッパ・ベルリン事務所のマインケ・ニールス氏は、「出展面積を従来よりも広げる必要があった」と話す。ジャパンパビリオンをほかの日系企業と分け合うのでは面積が足りないらしい。

海外に売り込みかける三菱電機とJ-TREC

三菱電機の海外展開は、空調機器がボンバルディア(現アルストム)製のロンドン地下鉄向け車両に搭載されるなど堅調だが、さらに海外売上を伸ばしたいと同社は考えている。シーメンスやアルストムといった世界の大手メーカーは車両だけなく電機品も製造し、さらに保守も手がける“フル・ターンキー・プレイヤー”だが、「彼らは空調機器を手がけていない。そこにわれわれの勝機がある」(ニールス氏)。まずシーメンスやアルストムがメインで製造する車両に空調機器で食い込み、鉄道事業者やメーカーの信頼が得られれば、さらに主電動機などほかの電気機器に広げていく構えだ。

三菱電機のブースにはグループ単位での視察者が絶えなかった。イノトランスの見学コースに組み込まれているようだ。なお、日本で問題になった三菱電機の検査不正については、海外の視察者の間で話題になっている様子はなかった。

車両製造大手の総合車両製作所(J-TREC)は、今までJR東日本グループの一員として出展していたが、JR東日本が不参加となったため今回は単独での出展。山手線E235系など日本国内向けの製造を主力とするが、2020年に受注したフィリピン・マニラ地下鉄向け車両の模型を会場の目立つ場所に据えた。「これからは海外に力を入れたいという意味を込めた」(海外事業本部の中村裕樹課長)。1993年にアイルランド国鉄向けの車両を製造した実績をぬかりなくPRする。もちろん、日立、トヨタ自動車とともに同社も開発に参加するJR東日本の水素燃料電池車両「HYBARI」の説明も忘れない。

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