これに対して、中性脂肪はカイロミクロンやVLDLというリポたんぱくに乗って運ばれる。脂肪細胞の中に蓄えられて、糖質が不足したときに脂肪酸に分解されて利用されたり、体を動かすエネルギー源として使われたりしている。このため中性脂肪が悪いものというイメージが湧きにくい。
ところが近年、中性脂肪の増加が動脈硬化の大きな危険因子になることがわかってきた。
超悪玉を増やす働きが判明
動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールなどが付着して血管が狭く硬くなり、血液の流れが悪くなった状態だ。その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病を引き起こす危険が高まる。
この動脈硬化で特に問題となるのが、「超悪玉LDLコレステロール」、英語ではsmall dense LDLというもの。悪玉のLDLコレステロールの中でも、小型で高比重のコレステロールだ。つまりLDLのサイズが小型化したものだ。
浅原さんは、「超悪玉LDLコレステロールは酸化されやすく、小さいので動脈の内皮に入り、血栓を作りやすい。このため、通常のLDLコレステロールよりも、動脈硬化を引き起こしやすい。近年の研究により、中性脂肪が多いと超悪玉LDLコレステロールを増やす特性があることが明らかになったのです」と説明する。
脂質異常症の診断基準は「高LDLコレステロール血症(140mg/dl以上)」「高トリグリセライド(中性脂肪)血症(空腹時150mg/dl以上)」「低HDLコレステロール血症(40mg/dl未満)」となっている。
脂質異常症については、従来、食事療法や運動療法で効果が得られない場合、薬による治療が行われてきた。最もよく使われているのは“スタチン系”と呼ばれる薬だ。速やかにLDLコレステロール値を下げることが知られている。
「ところが薬を使っているにもかかわらず、脂質異常症の患者さん全体で見ると、心血管病のリスクは6割くらいまでしか減っていないことがわかってきました。そこで残りの4割については別の原因があるだろうと研究が進められてきたのですが、その結果、明らかになった犯人が中性脂肪だったというわけです」(浅原さん)
中性脂肪が心血管病の主原因とする研究論文も、ここへきてたくさん報告されているという。
また近年、食後血糖の高値が健康を損なう原因として注目されているが、実は「食後中性脂肪」も同様に(あるいはそれ以上に)問題である可能性が出てきたのだ。
「会社などで行う健康診断では空腹時に中性脂肪を測定するようになっていますが、最近の研究から、空腹時に中性脂肪値が低い人でも、食後の中性脂肪値が高い場合は、超悪玉LDLコレステロールが増えることがわかりました」(浅原さん)
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