軍事・外交の両面でほぼ「詰んだ」プーチン大統領 核を使っても使わなくても国内外で窮地に

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プーチン氏としては、国内向けには大規模な報復を実行したことで、ロシア国民に対し「戦果」を久々にアピールする狙いがあったとみられる。同時にウクライナ向けとしては、多くの市民を殺傷するとともに、発電所などのエネルギー関係のインフラを破壊することで国民の抗戦意欲を削り、停戦交渉に応じるよう圧力を掛ける狙いだったとみられている。

しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領は報復攻撃開始直後に出した声明で、2014年のクリミア併合時にロシアに奪われた全領土の武力奪還を目指すことを改めて表明し、ロシアとの交渉を拒否する立場に変わりがないことを強調した。

またゼレンスキー大統領を招いて緊急首脳会合をオンラインで開催したG7も10月11日、プーチン政権に対して厳しい姿勢をとり、ウクライナへの軍事支援をさらに強める立場を打ち出す声明を発表した。

G7もウクライナへの支援を強める

この声明のポイントとしては、①プーチン氏を名指して「戦争犯罪」の責任を取らせることを明確にしたこと、②全領土の武力奪還を目指すゼレンスキー大統領の方針を支持する姿勢をより明確に打ち出したことの2点にある。

とくに②に関して声明は、「国際的に承認された国境内でのウクライナの領土の一体性と主権を完全に支持する」と表明した。2022年9月23日にG7が出した前回の首脳声明が「領土の一体性を維持するウクライナの必要性を支持する」としていたのと比べると、「国際的に承認された国境内」を盛り込んだのが新しい点だ。

これは、2022年9月末の「住民投票」を経てロシアが併合を宣言したウクライナの東・南部4州に、クリミア半島を合わせた全併合領土の回復を支持することをより明確化したものだ。

ウクライナは全領土奪還の方針について、2022年8月末の反攻作戦開始前、すでにアメリカのバイデン政権との間では合意していたが、今回G7もウクライナに同調したことになる。これまでロシアとの対決姿勢において、アメリカやイギリスとは異なり、ドイツやフランスに対して不信感を抱いていたゼレンスキー政権は、両国との溝をかなり埋めたことになる。

同時にこれは、領土や占領地に関してロシア、とくにプーチン政権との交渉を拒否するとしているゼレンスキー大統領の方針をG7として事実上支持することを意味するものだ。

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