圧倒的に数字に強い人がやっている「頭の体操」 日々の「小さな習慣」が大きな差につながる
先の公式に当てはめると、
この店の損益分岐点売上高=75万円÷60%=125万円
と計算できます。客単価は600円でしたから、125万円÷600円=2083人の延べ顧客が来店するとこの店は黒字になるということです。月に24日開店とすると、1日に必要な顧客数は延べ87人です。
午前と午後で顧客の入店パターンは異なりますが、朝の客数の多い時間に観察したところ、だいたい30分当たり12人(1時間に換算すると24人)は買ったようです。午後2時頃は30分で3人(1時間に換算すると6人)です。
パン屋さんは1日の中で繁閑が分かれますが、ここでは「繁」の時間が3時間、「閑」の時間が5時間と考えてみましょう。そうすると、この店の1日の延べ顧客数は、24×3+6×5=102人となるので、おそらく黒字と推定できそうです。
かなりラフな試算ではありましたが、こうしたちょっとした頭の体操が、ビジネス数学力を高めるのです。
損益分岐点への感度を高める頭の体操②
仮説的に置いた条件を変えて試算してみるのも有効です。これを感度分析といいます。シミュレーションの基本です。
たとえば先の計算では客単価を600円と見積もりましたが、実は500円かもしれません。そうなると、必要な延べ顧客数は月当たり125万円÷500円=2500人、1日に直すと104人となります。もしこちらの方が正しいのなら、このパン屋さんはギリギリ黒字、あるいは夫婦の取り分はもっと少ないのかもしれません。
ちなみに、筆者もこうした計算を時間つぶしにしてみることが多いのですが、実際の経営者でもそうした習慣を持つ人はいます。たとえばカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の創業者である増田宗昭氏は、若い頃、いろいろな店に入るたびにこうした計算をしてみたそうです。
あるいは、「宅急便」のビジネスを始めたヤマト運輸の故小倉昌夫氏は、事業開始に先立ってニューヨークに出張した際、UPSの配送車1台が市内の1ブロックごとに配属されていることに気づき、そこからトラック1台当たりの損益分岐点を求め、構想中の宅急便ビジネス全体の損益分岐点を推定するヒントにしたといいます。
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