iPhoneの「気持ちよさ」が、料理さえも変える インタラクション研究者が描くIoTの未来

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「モノのインターネット」という呼び方は、通常のインターネットは人間が能動的に、コミュニケーションを取ったり、情報を受発信するために活用するという前提があるから起きたことといえる。インターネットは人にとって道具なのだ。

しかしIoTは、どうも人間不在で進行するため、知る必要はないのかもしれない。

確かに、自販機の売り上げをいちいち人に通知してきても、人間の側がオーバーフローしてしまうし、逐一知る必要はないだろう。また自販機が、「今日何本売れました」と表示する必要もないのだ。

では、IoTは、われわれ一般のユーザーとしての人々の役に立たない、隠れた存在であり続けるのだろうか。ここにメスを入れている研究者がいる。

明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科で専任講師を務める渡邊恵太氏は、インターフェイス、インタラクションを研究しており、身体性のあるインタラクション作りとともに、IoTなどの画面を持たないデバイスを前提とした研究をしている。

テーマは、「新しいインターネット体験」だ。

iPhoneはなぜ心地よいのか?

明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科で専任講師を務める渡邊恵太氏

渡邊氏は、近著である『融けるデザイン - ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論』の中で、「iPhoneがなぜ気持ちよいのか」について分析している。

iPhoneの心地よさは、ハードウエアとソフトウエアのシームレスな開発による「自己帰属性」と「透明な道具」によって作り出されている、と説明する。道具、デバイスでありながら、自分の手の動きに俊敏かつ正確に反応する。

このことから、慣れてくると、iPhoneそのもののことは忘れ、画面の中のことに注目がいくようになる。これが、自己帰属性であり、透明な道具たる所以だ。詳しくは、本書を参照して頂きたい。

Appleはマルチタッチディスプレイで、この「透明な道具」を実現した。では、この心地よさを、画面なしで実現するにはどうすればよいのだろうか。渡邊氏の研究テーマのひとつがまさにこのことであり、IoTが人に直接的に役立つ可能性を見せてくれるのだ。

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